▼ 新学期2
スニッチはお守り袋の表面の布地で羽根をばたつかせ動き回っているが、時間が経って魔法が薄れてしまったのか、動きが若干鈍くなっている気がする。ソフィアが「これなら捕まえやすそうね」と言うと、セドリックだけでなくレティやマルタも吹き出した。
「打倒ニンバスよ、頑張りなさいよね」レティが言った。
「倒し甲斐がありそうだね」
強気なレティの言葉に、これまた強気な言葉で返したセドリックはクスクスと笑った。どんな台詞もセドリックに言わせれば爽やかな好感の持てるものに変わるのだからソフィアには不思議だった。
「そういえば、冬休みどうだった? 父さんがクリスマスに招待したかったってうるさかったよ」
「素敵なプレゼントに囲まれてたから楽しかったわ。ディゴリーおじさんに、夏休みは遊びに行きたいですって伝えておいて欲しいわ」
「分かったよ。君と会うチャンスを逃してイジケけてたから、喜ぶと思うよ」
「私のママとパパもセドリックに会いたがってるはずだわ。今度遊びに来てね」
ソフィアの両親が魔法省勤めのため、セドリックとは家族ぐるみの付き合いだった。ソフィアの両親は、爽やかで礼儀正しいセドリックを気に入っている。こんなにハンサムな優等生が子供の同級生にいたら、どんな生徒の両親だって気に入るはずだとソフィアは思った。
「げっ! 休み明け早々占い学かよ」
時間割を見たギリアンが嫌そうに呻いた。その言葉を聞いてソフィアも項垂れる。占い学では、ソフィアはやたらと不幸の予兆を言われるのだ。恐らく、トレローニーがセドリックの茶葉を見て骨折するなんて言い出したところをソフィアが違う意味だと指摘したせいだろう。それ以来、トレローニーはソフィアと目が会うたびに大げさに身体を震わせ、可哀想にと声を震わせて囁くのだ。
週末、更衣室の外にはクィディッチのユニフォームに身を包んだセドリックが立っていた。試合の緊張からか、ウロウロと同じ場所を行ったり来たりしている。セドリックの表情は険しく、眉を顰めていたが、ソフィア達の姿を視界に入れた途端笑顔を浮かべた。
「来てくれたんだね」セドリックがはにかんで、嬉しそうに言った。
「緊張してる?」
ソフィアが心配そうに聞くと、セドリックはうなずいた。
「やっぱり、まだ二回目だからかな。緊張するよ」
「スネイプ先生が審判なら、ハッフルパフ贔屓の判定してくれるから元気出して!」
「先生は贔屓で勝敗を決めたりしないよ」
ソフィアなりの励ましの言葉に眉を下げたセドリックは、グリフィンドールには堂々と勝ちたいなと笑って付け加えた。その反応にギリアンがぼそっと流石プリンス・ハッフルパフと呟いたが、幸いにもセドリックの耳には届いていない様子だ。
マルタとレティがそれぞれエールを送り、ギリアンが贔屓な判定だとしても何としてでも勝てよとニヤニヤ笑いながらセドリックを小突いた。ギリアンはスリザリンに組み分けされても馴染めたに違いないとソフィアは思った。
会場はいつも以上に人でごった返していた。どの席も一番高い席まで埋まっている。遠目に銀色のヒゲが見え、ダンブルドアまでもがこの試合を見にきていることに気づきソフィア達は顔を見合わせた。ハリーが箒に呪いをかけられた話は以前直接本人達から聞いたが、その防止策で来たのだろうか。呪いがかけられなくても、スネイプのあの顔を見る限り、彼が直接箒からハリーを叩き落としそうだとソフィアは思った。
二チームの選手が入場すると、大きな拍手で迎えられた。今日の会場にはスリザリン生もいつもより多くいるが、スネイプの審判で追い詰められるグリフィンドールが見たさに来たに違いないとソフィアは思った。カナリアイエローのユニフォームに身を包んだセドリックは、グラウンドでスクラムを組んで作戦会議をしている。フレッドとジョージをはじめとしたグリフィンドールの選手は、次々と宙へ浮かびウォームアップしていた。
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