▼ クリスマス休暇4
早速貰ったセーターを着て、大広間へ向かう。玄関ホールには、ハリーやウィーズリー一家がすでに揃っていた。昨日の夜まで一緒に過ごしていたのだから、ソフィアは不思議な気分だった。
おはようと手を振れば、フレッドとジョージも手を挙げた。フレッドとジョージも青いセーターを着ていた。片方には黄色の大きな文字でフレッドのFが、もう一つにはジョージのGがついていた。セーターの色がお揃いだと気付いたのか、二人はニヤリと笑った。
「ママは遂に僕らを三つ子だと思ったらしい。」
フレッドが言った。
「ハリーにもそう言われたしな。それ位、そっくりなのさ。それか、僕たち三人が自分の名前を忘れかねないと思ったんだろうな」
ジョージがコンパートメントで初めてハリーと会った時を思い出したように言う。
「三つ子じゃなくても、いつかソフィア・ウィーズリーになる可能性は少なくないだろ?」フレッドが言った。
ジョージが手を口に入れ吐く真似をした。やめてよとソフィアが言ってもケラケラと笑う。フレッドは「その場合ソフィアは誰と結婚したいかい? 男子は6人、選り取り見取りさ」なんて意地悪く笑った。ソフィアの昔の頃を暗にからかっているのだと察して、顔を顰めた。
「わたち、チャーリーと結婚する!」フレッドが裏声で言った。
「ビルとも結婚すりゅわ!」ジョージの声は、高い声が出なかったのか掠れている。ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてソフィアを見た。
「でも、パースはいやっ!」
フレッドとジョージが声を揃えて言うと、二人で腹を抱えてその場に崩れるように笑い出した。ソフィアは黒歴史を蒸し返されて、怒りで顔が赤くなるのが分かった。ソフィアはドラゴンではないが、今なら火だって吹けるかもしれない。パーシーは此方から願い下げだといった顔でソフィアを見ている。
「もう! 本当に意地が悪いわ!」
ソフィアが叫ぶように言うと、ハリーとロンを引っ張って大広間へ入った。二人は先ほどまで笑っていたが、今は面倒そうに顔を歪めている。それを見たソフィアが「引っ張って悪かったわね」と拗ねたように呟いて、二人を開放すると一人で席に着いた。
「おいおい、悪かったって」
「機嫌損ねるなよ、ソフィアちゃん」
間を挟むようにフレッドとジョージがテーブルに手をついてソフィアをのぞき込んだ。最初はそっぽを向いていたソフィアも、諦めたようにため息をついた。両隣の双子を気にするより、どれだけ七面鳥のローストを食べられるか考えた方が有意義だ。丸々太った七面鳥のローストはなんたったって100羽はいる。他にも山盛りのポテトやチポラータ・ソーセージ、煮豆……テーブルの上に所狭しと並べられた豪華な食事に、ソフィアは機嫌を損ねていたことも忘れて頬を緩めた。
ハリーとフレッドが、テーブルに置かれた魔法のクラッカーをかき集めている。ハリーは特に大はしゃぎで、「ダーズリーの家のちゃちなクラッカーとはわけが違うや!」と楽しそうに言って次から次へのクラッカーの紐を引っ張った。大砲のような破裂音がして、ソフィアは慌ててフォークとナイフを手放して耳を覆った。鼓膜が破れるかと思えるくらい大きな音だ。クラッカーからもくもくと出てきた青い煙が晴れると、そこには二十日ねずみが数匹と海軍少将の帽子があった。帽子をかっこつけて被ったフレッドが仰々しく敬礼をする。
「監督生閣下に、一同……敬礼!」
それに続くようにロンとジョージも真面目な顔で敬礼するので、パーシーは馬鹿にするなと言って怒ってしまった。ソフィアが引いたクラッカーからは眼帯が出てきて、フレッドが欲しがったのであげた。ロンも羨ましそうにそれを見ていた。まだまだ子供だと思ったのがバレたのか、ロンはすぐに視線をそらした。
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