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▼ クリスマス休暇1

 大広間を出た玄関ホールで待っていると、大理石の階段を降りてきた双子が見えた。

「おはよう、ソフィア」

 フレッドとジョージが声をそろえて言った。ソフィアはわくわくと目を輝かせて、手を振る。手招きされて、ウキウキと二人がいる大理石の階段を上がった。今日から始まるクリスマス休暇を、ソフィアはグリフィンドール寮で過ごす約束になっていた。他の寮に行くなんて冒険のようだ。ソフィアの心臓がドクドクと鼓動を早めて存在を主張している。

 グリフィンドール寮は驚くほど複雑な行き方で、体力が求められた。引き戸の陰とタペストリーの裏の隠しドアを二度も通り抜けなければならない。その上、ハッフルパフ寮への道のりと比較して考えられないほど階段を上らなくてはいけなかった。

 ピンクの絹のドレスを着た婦人の肖像画の前で、双子が足を止めた。婦人はとても太っている。もしかすると、太った修道士より太っているかもしれないとソフィアは思った。

「合言葉は?」太った婦人が聞いた。

「アボガド・ミルフィーユ」

 フレッドが唱えると、肖像画がパッと前に開き壁に丸い穴が現れた。穴はハッフルパフ寮に続くものと似ているので、ソフィアはすぐにここがグリフィンドール寮だと理解できた。ハッフルパフは、ハッフルパフリズムで樽を叩くが、グリフィンドールは合言葉制らしい。

 穴をよじ登って進むと、すぐに暖かい部屋に着いた。グリフィンドールの談話室は、一言で言えば真紅だった。ハッフルパフの談話室にカナリアイエローを使った家具が多いのに対し、グリフィンドールは真紅が多い。真紅と黄金で大きなライオンが描かれたタペストリーがかけられ、ふかふかの肘掛け椅子やソファは深い赤色に染められている。

 暖炉に一番近い肘掛け椅子を陣取り、ソフィアは持ってきたカゴから串とマシュマロやトーストを取り出した。

「君って最高だぜ」ジョージがマシュマロを火に炙りながら言った。

 フレッドとジョージが悪戯の計画や新しい魔法や悪戯グッズの妄想を膨らませている側で、ソフィアは目を閉じた。ウトウトと微睡みに合わせて頭が揺れる。

「あれ、ソフィア?」

 ハリーの声がして、ソフィアは目を見開いた。寝室から談話室に降りてきたハリーとロンは、口を開けてソフィアに驚いている。ビックリしたと顔に書いてあるようだ。二人の様子にソフィアは笑って手を振った。フレッドが「面白いだろ?」と、悪びれることなく言った。

「短い間だけど君もグリフィンドールの仲間ってわけだ」

 ニヤリとハリーが笑った。それにソフィアも笑い返し、火で炙っていた串に刺さったマシュマロを差し出した。

「朝ごはんの代わりに、直炙りのトーストとマシュマロはどう? サンドイッチもあるわ」

 ソフィアが先ほどまで炙っていたマシュマロたちに加えて、カゴからサンドイッチも取り出すとハリーとロンは喜んで近くのソファに腰掛けた。

「ソフィアは、我がグリフィンドール寮から一歩も出る気がないと見た」

「そうとも、大量の食料を持ち込んでるぞ」

 フレッドがやれやれとソフィアの持ち込んだ大きなカゴに入って居る簡易的な料理を見ている。

「凄いや。どこから持ってきたの?」

 ハリーの質問にソフィアはニヤリと笑うだけで答えなかった。此処へ来る前に厨房でしもべ妖精に作ってもらったものだ。城のキッチンを利用できるのは、ハッフルパフ生の特権だ。教えてもいいが、広められて生徒が殺到したらしもべ妖精が困ってしまう。

「クランペットも炙ったら美味しそうだよね」

 勿体ぶるソフィアを無視して、ロンが口の周りをマシュマロで汚しながら言った。ソフィアは頷いて同意したものの、とても立ち上がる気にはなれない。地下に戻って、もう一度階段を登るなんて考えられなかった。


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