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▼ ホグズミード村1

 十二月にもなると雪で辺り一面がおおわれた。城の中がクリスマスムード一色に染まっていく。凍てつく様な寒さとは反対に、城中が温かみのあるクリスマスの飾り付けが施されてはいたが、寒さはどうにもならない。

 冬になると、授業で一喜一憂することが余計に増える。特に魔法薬学の授業は地下牢で行われるため、寒さで歯がカチカチと鳴り出すほど凍える羽目になる。朝一番に魔法薬学があれば、寮や学年も関係なしにホグワーツ生は皆そろって顔をゆがめた。

 魔法薬学の授業中、スネイプはいつもと変わらず生徒に意地悪をしてまわった。首まで襟が詰まった服を着ているが、当然手袋はしていない。それどころか、ソフィア達の息は白く、身体を震わせているのに対して、スネイプはつらつらと作り方について説明している最中も暖かい部屋にいるかのように快適そうに見えた。

「スネイプは一体どんな魔法を使ってるのかしら」ソフィアが体を縮こませながら言った。「全然寒くなさそうだわ」

「この地下牢にずっといるのに、確かに変よね」

 レティは包丁の面を当ててクコの実を潰しながら言った。刻むと言われなかっただろうかとソフィアは慌てて教科書を見た。やはり、刻むようだ。レティに伝えると、「このまま潰し終わったやつを刻んじゃダメかしら?」と親の仇を見るような目でまな板を睨んだ。

「スネイプは寒さなんて感じないのさ」

 ギリアンが歯を震わせながら言った。

「ギリアン……おい……」

 セドリックが咎めるように小声でギリアンに言った。ソフィアもセドリックの視線の先を見て悲鳴をあげそうになった。代わりに引き攣ったヒキガエルのような声が漏れる。スネイプが静かにギリアンの後ろに佇んでいた。ギラギラと真っ黒な瞳を光らせて、どうやって罰してやろうかとワクワクしているように見えた。

「スネイプに血が通ってると思うか? あいつが普通の人間だったら、今頃寒さに負けて地下牢から教室を変えてるはずだぜ」

「ハッフルパフから五点減点。サマーズ、恨み言は、まともな薬を作れるようになってからにして貰いたいがね。罰則は後ほど言い渡そう、楽しみにしていたまえ」

 最悪だとギリアンは重いため息をついた。ソフィアは自分がこの話題を出したせいでと若干顔色を悪くしたが、罰則から免れたことへの安堵の方が優ってたまらずニヤリと笑う。

「アスター、君も罰則を受けたくなければ授業に集中しろ」

 ソフィアは慌ててギリアンとスネイプから視線を外し、自分の大鍋に集中した。罰則を受けずに済んだソフィアを、ギリアンが恨めしげに見た。
 
 週末、ソフィアは悪戯など悪巧みする時に使う隠し部屋にいた。フレッドとジョージが見つけた部屋で、五階のタペストリーの裏、隙間にあるごつごつとした出っ張りを押せば、その隙間は見る見る間に大きくなり、人一人通れるくらいになる。

 一体どうやって探し出したのか。初めて連れて行かれた時のソフィアは驚き半分呆れ半分だった。ソフィアは、彼らの成績が悪い理由はこれかと一人納得した。恐らく宿題する間も惜しんで城の探索をしているのだろう。ウィーズリーおばさんがこの事を知ったら吠えメールを送りそうだ。

 隠し部屋には古びたソファや机が置かれ、暖炉まである。暖炉は流石に掃除がされていないため最初は使えない状態だった。覚えたばかりの呪文で掃除をしたお蔭で、今ではパチパチと音を立てて薪を燃やし、部屋を暖めている。

 ソフィアはソファに腰掛けて本を読んでいた。ソフィアの隣にジョージが座り、フレッドは向かいのソファに寝転がって呪文書を熱心に読みながら杖をゆらゆらと動かしていた。

「クリスマス休暇はどうするんだ?」

 ジョージが、ソフィアと自身の真上にヤドリギが現れたので横っ飛びしながら質問した。クリスマスにヤドリギの下にいる人は、キスを拒むことができない。イギリスに伝わる伝説がジョージの頭をよぎったのだろうとソフィアは呆れ半分に横目に見た。自分からジョージにキスすることなんて地面と空がさかさまになってもあり得ない。

 ソフィアは気にせず本のページを捲り、ぐにゃぐにゃと並ぶ文字から視線を外さずに答えた。

「ママもパパも仕事。だから残る予定よ」

「おっと! ヤドリギの下に女性を放っておくなんて、ママにどやされるぞ」

 フレッドがニヤリと笑ってジョージが避けて空いたスペースに滑り込んだ。今度はソフィアが「ちょっと!」と慌てふためいた様子で、ヤドリギの下から出る。ジョージの時とは打って変わって、ソフィアの顔は真っ赤になっていた。フレッドは一人ヤドリギの下で腹を抱えて笑っている。


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