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▼ 勝利のお祝い8

「さて、先ほど入場で転んだハッフルパフのセドリック・ディゴリー。彼の失敗をいったい何人の男子生徒が待ち望んでいたでしょうか。今日の試合も注目選手であることは間違いないでしょう」

「ジョーダン!」

「失礼しました、先生」

 双子のウィーズリーの仲間、リー・ジョーダンの実況に、温厚なハッフルパフ生もブーイングした。(一部の男子生徒は拍手を送っていた。)リーは、マクゴナガル先生の厳しい叱責を受けながら、反省した様子もなく実況放送を続けている。

「さて、ハッフルパフの攻撃です。ブラウンがクアッフルを持ちました。ものすごいスピードでゴールへ向かっていきます。チェイサーのルーサーをかわし、……痛い! レイブンクローのビーター、アデラ・トーマスが打ったブラッジャーが顔面に当たりました。女性とは思えない強打です。落としたクアッフルをデイビースが拾います。レイブンクロー、見事な連携プレーです」

 激しい攻防が繰り広げられている遥か上空で、セドリックは飛び回っている。スニッチを探しているようだ。

「レイブンクローの攻撃となりました。チェイサーのロジャー・デイビースはゴールへ一直線です。ブラッジャーをかわし、ブラウンをかわし、ビーターのロイスとブリーンもかわします。凄い勢いだ! デイビースが投げ、ゴール! 十対〇です! 先週と打って変わって、正々堂々とした気持ちのいい試合が繰り広げられています。やはり、ホグワーツにはスポーツマンシップを持ち合わせていない寮は一つしかないようです」

「ジョーダン!」

「冗談ですよ、先生。えー、誰かを殺そうとする選手がいない中で……」

「ジョーダン! いい加減にしなさい!」

「了解、了解。ハッフルパフの攻撃です。チェイサーのケインがクアッフルを取りました。デイビースをかわします」

 マクゴナガルの叱責に、リーはようやく試合の解説に戻った。試合とは関係のないスリザリン生からブーイングが起きている。ハッフルパフ生は低くどよめいた。またレイブンクローにクアッフルを取られ、得点を決めたところだった。試合は、誰が見ても(リーの解説がなくても)ハッフルパフが劣勢だと分かる。徐々にレイブンクローと点差が開いてきた。

 ソフィアが上空を見上げた時、セドリックはブラッジャーをかわしたところだった。箒を一回転させてかわしたが、セドリックがそのまま地面へと一直線に急降下していく。観客も、何事かと騒めいた。セドリックの後をレイブンクローのシーカーが追いかけていく。セドリックはスニッチを見つけたんだ!

 セドリックが腕を伸ばした。双眼鏡を覗くと、セドリックの指先がなんとかスニッチの羽を掴むところだった。逃げ出しそうなスニッチを、セドリックがそのままもう一方の手で本体を掴む。両手を箒から離したセドリックは、そのままバランスを崩して箒から落ち、地面に転がった。ソフィアは悲鳴を上げた。審判のフーチも慌てた様子でセドリックのもとへ飛んでいく。

 地面に倒れたセドリックが起き上がった。しっかりとスニッチを握りしめ、ガッツポーズをする。地面に転んだせいで泥だらけで、顔まで土がついている。
「勝ったぞ!」

 セドリックの無邪気な雄叫びに、ハッフルパフ生は歓声を上げた。空気が揺れた。ハッフルパフにとって、久しぶりの勝利だった。それも、今回も負けるのかもしれないと誰もが一瞬考えた中で! みんな立ち上がり、叫んだ。ソフィアは雄叫びのように喜びを叫び、隣にいたギリアンたちと抱き合った。周りを見れば、ハッフルパフ生同士同じように喜びで抱きしめあっている。なぜか、オリバー・ウッドもハッフルパフの上級生に抱きしめられ、逃げ出そうともがいていた。

「ディゴリー! ディゴリー! ディゴリー!」

 ディゴリーコールが会場を包む。相手のレイブンクロー側の客席は通夜のように静かで、徐々に人が減っていった。ハッフルパフの生徒は興奮冷めやらぬまま、観客席からピッチへと降りていく。ソフィアやレティ、マルタにギリアンまで、もちろん他のハッフルパフ生も含めた全員が満面の笑みを浮かべてセドリックの方へ駆け寄った。セドリックはスニッチと今朝渡したお守り袋を掲げ、歯を見せて大声で笑った。セドリックの珍しい表情にハッフルパフの女子生徒が赤くなり固まる中、四人は走った勢いそのままにセドリックを抱きしめる。

「おめでとう! 貴方って最高のシーカーだわ!」

「初戦でこの活躍かよ!」

 ソフィアとギリアンが歓声に負けないよう張り裂けんばかりに叫べば、セドリックは揉みくちゃにされながら耳を手で塞いだ。うるさすぎるよと照れたようにはにかんで笑うセドリックに、ギリアンが生意気だと笑って首に手を回す。嬉しそうに笑うハッフルパフ生はそのまま寮へなだれ込み、談話室で祝勝パーティーが始まった。厨房からもらって来たらしいご馳走の匂いが談話室中を包む。騒ぎ疲れたのもあって、ソフィアが壁沿いのソファに座っていると、髪がボサボサになったセドリックがかぼちゃジュースを持って現れた。ソフィアも有り難く受け取り、ソファのスペースを空ける。

「お疲れ様、おめでとう!」

「有難う、横断幕とこのお守りのおかげだよ」

「今日の勝利はセドリック自身の頑張りのお陰よ。セドリックが努力していたことは皆知ってるもの」

「有難う」セドリックは口角をきゅっと上げた。

「じゃあ、今日の主役に乾杯してもいい?」

 かぼちゃジュースがなみなみ注がれたゴブレットを掲げた。セドリックも楽しそうに肩を揺らして笑い、ゴブレットを掲げる。合わさったゴブレットがカツンと音を立てた。


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