immature love | ナノ


▼ 勝利のお祝い6

「さっき、私の代わりにクィレル先生を起こしてくれてたわよね?」

 フレッドを見送っていると、おずおずとハーマイオニーに声をかけられた。ソフィアは彼女を知っているのは一方的なものだったと思い出して、慌てて自己紹介をした。

「私、ソフィア・アスターよ。ウィーズリー家とは昔からの付き合いなの、そこのロニー坊やもね」

「ハーマイオニー・グレンジャーよ。さっきは有難う」

 ふわりと笑う彼女に好感が持てた。ミス・パースと言っていたが、全然違うではないか。それどころか、パースだったらクィレルをなぎ倒した時点で、自主退学していたに違いない。首を絞められたように顔を真っ赤にしてペコペコと直角に何度もお辞儀するパーシーが思い浮かんだ。

「最初、私が知らないだけでグリフィンドールの上級生なのかと思ってたわ」

 眉を下げてハーマイオニーは笑った。もう十一月だ。入学してから二ヶ月以上経つのに! とソフィアは笑った。

「私はハッフルパフよ、今だけはグリフィンドールだけどね」茶目っ気たっぷりに笑うソフィアに、ハーマイオニーは笑みを深くした。

「他の寮に知り合いが全然いないの、よければまたお話ししましょう」

「ええ、勿論よ」

 ソフィアはハーマイオニーと握手を交わした。ミス・パースという印象のままだったら願い下げだが、クィレルをなぎ倒す破天荒な一面を見たばかりだ。誰がこんなに面白い子と仲良くならないのだろう。伊達に双子の幼馴染はやっていない。ソフィアは新しい友達に目を輝かせた。

 グリフィンドール対スリザリン戦から一週間経った。今日はレイブンクロー対ハッフルパフだ。週二回連続して早起きする土曜日に、ソフィアはベッドの中で呻いた。闇の魔術に対する防衛術のレポートの宿題が残り羊皮紙一巻分どうしても埋まらず、昨日は徹夜して取り組まなければいけなかったので、余計に寝不足だった。ハッフルパフ戦でなければ夢の世界に旅立っていたかもしれない。レティとマルタは、先週とは打って変わり、すでに起きてお互いの顔にフェイスペイントを施していた。レティはソフィアが起きたことに気づいたようで、マルタのフェイスペイントを修正しながら、顔を洗って来なさいとだけ言った。

「寝不足なのよ……闇の魔術に対する防衛術のレポートが終わらなくて……」

「いいから早く起きて、今日はセドリックのデビュー戦なのよ」

 そうだ。今日はセドリック・ディゴリーのシーカーとしてのデビュー戦だ。親友の応援は万全の状態で行わなければならない。ソフィアは着替えようとパジャマを脱いではベッドへ放り投げた。お目当ての服を探し当てようと、トランクから次々服を出しては放り投げたので、ソフィアのベッドの周りだけピクシー妖精に荒らされたような有り様だった。

「見つからないわ!」ソフィアは半狂乱になっていた。

「ソフィア、あなたは魔女でしょう!」マルタのフェイスペイントを終えたレティが、ソフィアのベッド周りの様子に気付いて驚いたように叫んだ。「呼び寄せ呪文を使いなさいよ!」

 ソフィアは慌ててベッドの脇机に置いていた杖を掴んだ。「アクシオ!」トランクの中から、カナリアイエローと黒でデザインされた長袖のスウェットが飛んできて、ソフィアの手元におさまった。ソフィアが探し求めていた服だ。縦に真ん中で色が分かれているデザインがお気に入りのものだった。残念ながら手袋はフレッドに渡してしまったので、ソフィアはハッフルパフのマフラーだけアクシオして、首に巻きつけた。

「はい、貴方の番よ。ソフィア」

 鏡の前に座っていたレティがどき、ソフィアと代わる。マルタが自慢げに化粧道具を見せた。アイライナーに、アイシャドウやマスカラまである。他に様々なペンもあった。マルタは応援用のフェイスペイントの他に、アイメイクもしてくれる。うっすらと目を開けると、鏡にグレーのアイシャドウを塗って、どこか大人びた自分の顔が映り込んだ。気恥ずかしい気持ちになったソフィアはもう一度目を瞑って、大人しくマルタにメイクをして貰うことにした。メイクが終わった三人で顔を見合わせ、いつもと少し違う大人びた顔をお互い見て笑う。最後に去年お互いクリスマスプレゼントで送った薄桃色のリップを付ければ完璧だ。

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