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▼ 勝利のお祝い4

 リー・ジョーダンの実況放送が青空に響き渡る。

「さて今度はスリザリンの攻撃です。チェイサーのピュシーはブラッジャーを二つかわし、双子のウィーズリーをかわし、チェイサーのベルをかわして、ものすごい勢いでゴ……ちょっと待ってください――あれはスニッチか?」

 ソフィアはリーの声に大慌てで双眼鏡を覗き込み、ピッチにくまなく目を凝らした。エイドリアン・ピュシーの近くに、黄色い閃光が見えた。エイドリアンも見えたのだろう、驚きで目を見開いてクアッフルを落とした。次に瞬きした瞬間には見逃したスニッチを、ソフィアは近くに視線を走らせ探した。観客の声が大きくなる。慌てて双眼鏡を外せば、急降下していくハリーの姿が見えた。スリザリンのシーカーと大接戦だ。ハリーの方が、若干早い。ハリーの手がスニッチを……。

 ソフィアはうわぁと打ちひしがれたような声を上げた。観客が低い声でどよめく。スニッチをハリーが捕まえようとしたところを、フリントが悪質なファールをした! ハリーはフリントに飛ばされたせいで、かろうじて箒に捕まっているような状況だ。

「この卑怯者! クズ!」

 ソフィアは力の限りの大声で野次を飛ばした。こう言う時に野次はしっかりやれと、ソフィアはチャーリー直々に教わっていたので、口汚さはおばさんが口をへの字に曲げるほどだ。

「退場させろ。審判! レッドカードだ!」黒髪の男子が叫んだ。

「サッカーじゃないんだよ、ディーン」ロンがなだめるように言った。「クィディッチに退場はないんだよ。ところで、レッドカードって何?」

「マグル学で習ったばっかりだわ! 好きな選手を退場させられるのよね?」ソフィアが口を挟んだ。「まさにこの状況にうってつけだわ!」

「うーん、まぁ、そんな感じ」

 ディーンは明らかに適当な様子で頷いた。

 その後、フレッドが放ったブラッジャーはフリントの顔にぶつかった。ペナルティシュートでスリザリンに得点は入ってしまったが、そんな事はどうでもいいとソフィアは歓声を上げた。フレッドはそのまま器用に棍棒を操って、相手のチェイサーたちの進路を妨害している。まるで鳥のように自由に空を飛び、ブラッジャーを自在に操る姿はかっこいい。ソフィアの視線は思わず試合そっちのけで、フレッドを追いかけた。

「一体ハリーは何をしとるんだ」

 双眼鏡を覗き込みながらハグリッドがブツブツいうので、ソフィアは双眼鏡をさらに上空へと向けた。そこには必死に箒にしがみついているハリーの姿があった。今やハリーは片手だけでなんとかぶら下がっている状態だ。

「ハリーが!」

 思わず悲鳴のように叫ぶが、ソフィアの悲鳴は観客のどよめきに紛れてしまって選手たちには届かない。それでも、会場の異変には気づいたらしい。双子は早々にハリーの下で輪を描くように飛び始めた。フリントがその隙に何度かノーマークでゴールしていたが、ブーイングする気にさえなれなかった。

「スネイプだわ。何かしてる……箒に呪いをかけてる」

 栗毛の少女(以前ロンに泣かされていた子、ハーマイオニー・グレンジャーだ。)が双眼鏡を覗き込んだまま言った。そんなわけ無いでしょうと驚くソフィアとは反対に、ハーマイオニーは確信しているようで「私に任せて」と言って席を立った。ロンはぎょっとしたように「ハーマイオニー?!」と彼女の名を叫んだ。

 下級生がスネイプの餌食となる前に止めなくてはいけないと、ソフィアはドラゴンの息と同じくらい熱い使命感を胸に彼女の後に続いた。ハーマイオニーは猪のように猛々しく観客をかき分け、先生方が立っているスタンドに突き進んで行く。彼女の猛進の被害者にはクィレルもいた。途中でハーマイオニーがぶつかった時は、不幸にもクィレルの体幹機能が全く機能せずそのままなぎ倒された。


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