immature love | ナノ


▼ 勝利のお祝い2

 セドリックはソフィアから離れると暖炉の前の肘掛椅子に座った。ふかふかのクッションに囲まれても、不思議とだらしなく見えない。

「ところで、今日のクィディッチは見にいくの?」

 セドリックが質問しながら、もう一度杖を振った。暖炉の前に椅子がもう一脚飛んでくる。

「そのつもりよ、勿論グリフィンドールの応援でね」

 ソフィアは頷いて、飛んできた丸椅子に腰掛けた。

「僕も応援するならそっちかな」

「一緒に見る?」

「ロジャーに誘われてるんだ。もし彼も一緒でよければ……」

 セドリックが肩をすくめて遠慮がちに聞いた。ソフィアは、「ロジャーも!?」と叫んだが、セドリックは驚いていないようだ。ソフィアの反応も予想通りだったらしい。

「あのプレイボーイとセドリックに挟まれて観戦だなんて、学校中の女子を敵に回すことになるわ!」

 嘆きのマートルの隣の個室あたりが私の居場所になっちゃうと言えば、セドリックは吹き出した。ソフィアも笑って、そろそろ着替えてこなきゃと独り言のように呟いてから立ち上がる。女子寮の入り口をくぐる際、ちらりと暖炉の前に視線を向ければ、セドリックは既に本を開いて何やら恐ろしく没頭している。課題なのか趣味の読書なのか分からないが、早朝に起きてきて読書をするあたりが彼らしい。ソフィアが杖を振って毛布をセドリックの膝にかけてやると、セドリックは本から目線を上げて微笑みながら軽く手を振った。

 部屋に戻れば、レティとマルタはまだ寝ているようなので(そもそも彼女たちがクィディッチを観にいく気があるのかも疑問だ。)ソフィアは起こさないようにそっとトランクから着替えを取り出した。普段のクィディッチの試合を応援するなら絶対に黄色だが、今日は真紅のニットセーターだ。ハイネックのそれはソフィアのお気に入りだったが、色が色なだけあってこういった日にしか着られないのが難点だ。タイツを二重に履けば寒さ対策も万全。手だけはハッフルパフの手袋になってしまったが、着けないなんてこの寒さの中では耐えられないので仕方ない。ソフィアは双眼鏡を首にかけて部屋を出た。途中で厨房に寄ろう。今日の天気は最高だ、観客席で朝ごはんというのもいいだろう。

 観客席は空中高くに設けられているが、ソフィアの経験から言わせてもらえば不十分だ。試合の展開によっては見えにくくなる。朝食を食べずに来たお陰か、観客席にはまだ人は殆どいない。最上階にゆったりと腰掛け、ソフィアはピッチを眺めた。立ち寄った厨房で貰ったサンドイッチを食べる。挟まれた具材はスライスチーズとハムだけのシンプルなものだ。

「もう来てたのか」

「我らがソフィア嬢は気合十分と見える」

 そっくりな声が聞こえて振り向けば、フレッドとジョージが朗らかに笑いながらソフィアのもとへ来た。まだ更衣室に行ってないのか、スウェット姿のまま。ユニフォームには着替えていない。

「どうしたの? 更衣室に行かなくて大丈夫?」

 ソフィアは時間が気になりソワソワとした。自分のことではないのに、双子が試合に遅刻するのではないかと心配になる。

「ああ。ウッドにどやされるからな、すぐ戻るさ」

 怖い怖いとフレッドは肩をすくめた。勘弁してほしいよなとジョージは半ば呆れ顔だ。何か用があったのかソフィアが問えば、双子はそっくりの顔にそっくりな笑顔を浮かべた。


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