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▼ ハロウィーン2

 浮かれた雰囲気もすぐに落ち着いた。一限目は魔法薬学の授業だった。地下牢の教室は、並べられた鍋から沸々と魔法薬の苦い香りがたち、パンプキンパイの香りもここまでは届かなかった。

「座りたまえ」

 スネイプはローブを翻して不機嫌そうに言った。厳罰を処されてはたまらないと、ハッフルパフとレイブンクローの生徒は慌てて席に着いた。スリザリン生がいないのは、精神的に良いとソフィアは周りを見ながら思った。スネイプはスリザリンの寮監で、自分の寮を贔屓することで有名だった。スネイプが自分たちに意地悪するだけではなく、スリザリン生まで意地悪くニヤニヤ笑うので去年の合同授業は最悪だった。こんなにスネイプの機嫌の悪い時にスリザリン生も一緒だなんて、トロールとゴブストーンで遊ぶよりも悪い事態だ。

「本日は混乱薬の調合を行う。この魔法薬は、小動物は一滴で、人間にはひと匙で正気を失わせることができる」

 スネイプはじろりと意地悪くレイブンクローのロジャー・デイビースたちを見た。かぼちゃジュースにでも盛りたいと思ってそうだ。姿勢を崩して座っていた彼らは、スネイプに見られた瞬間、肩を揺らしていそいそと姿勢を正した。

「……まあ、諸君はすでに混乱薬を飲んだようなものかもしれないが、これ以上醜態がないことを我輩は祈っている」

 スネイプは暗い瞳をギラギラと光らせ、唇なんて捲り上がっていた。

「この薬は、非常に繊細な工程を経て精製される。例えば、トモシリソウと誤ってキヨシソウを使った生徒は大鍋を爆発させ、魔法薬を頭から被ったものもいた。十分に気を付けて取り扱うように」

 スネイプの号令に、全員がキビキビと動いて材料棚に向かった。ハロウィーンに罰則は食いたくないと言わんばかりだ。

「あいつ、今日みたいな日にこそ罰則を与えるべきとか考えてそうだよな」隣でトモシリソウを掴みながらギリアンが囁いた。

「気を付けないとね」ソフィアはこそこそと返し、棚から白い小さな花を撮って首を傾げた。「あれ? オオバナノコギリソウって茎と花どっちが要るんだっけ」

「取り敢えずそのまま持ってけよ。使わないでも良いし」

 ギリアンの返事に、ソフィアは頷いた。そのまま四人がけのテーブルに戻り、材料を教科書を見ながら細かく刻んでいく。鍋に刻んだ材料を入れて、かき混ぜた。時計回りに二周半、反時計回りに五周。隣でセドリックがギリアンになにやら注意している。かき混ぜていくうちに教科書に書いてある青色より若干……だいぶ薄い水色になった。スネイプが通りがかり、ソフィアの鍋をじとりと見下ろしたが、退屈そうにふんと鼻を鳴らして通り過ぎて行った。及第点だったのだろう、もし何かミスしていればスネイプは水を得た魚のようにつらつらと嫌味を述べていたはずだ。

 スネイプは目をギラギラとさせて減点や罰則の機会を虎視眈々と狙っていたが、目立った失敗をした生徒は幸運にもこのクラスには一人もいなかった。スネイプはつまらなそうに、ラベルを貼って試験管を提出しろと命じた。

 一刻も早くこの地下牢から抜け出したいと、誰もが我先にと薬品を提出して出口へと向かっていく。机の上に散らばった教科書をかき集めたソフィア達も急ぎ足で教室を出た。

「薬が緑色になった時は終わったと思ったね」

「だから面倒くさがらずに撹拌する回数を数えろって言っただろ」

 ギリアンの呻き声にセドリックは呆れたように言った。

「次は私たちは魔法生物飼育学だけど、あなたたちはマグル学?」

 レティが質問した。ソフィアは頷きながら、念のためとばかりに「セドリックはマグル学に出るの?」と聞いた。セドリックは今回も「うん、まあ」と曖昧に答えた。

 以前セドリックが全ての授業を履修していることが話題になった際、どの授業に出るのか賭けをした。賭けの結果は出なかった。残念なことに全員がセドリックが出席していたと嘘を言い張ったし、セドリックも何も言わなかったので賭けは有耶無耶になってしまった。それ以降、全員がセドリックは欠席しているところを見たところが無いというのだから、何を意地になっているのかとソフィアは呆れた。


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