▼ おかしな時間割7
「君たち、言い争いじゃないだろうね?」
フリットフィックがマルフォイの肘あたりに現れ、キーキー声で言った。レティがすぐさま笑顔で「下級生が揉めているのかと思って……私たちも今来たばかりなんです」と言った。それにマルフォイが白い目で見ていたが、気を取り直したように箒がハリーの元へ送られて来たと言いつけた。
「いやー、いやー、そうらしいね。マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。ところでポッター、箒は何型かね?」
「ニンバス二〇〇〇です」
フリットウィックがハリーに笑いかけた。ハリーも嬉しそうにしながら答えている。対してマルフォイの顔は引きつっていた。
「実は、マルフォイのおかげで買っていただきました」
ハリーの嫌味に、マルフォイは怒りと当惑に顔を歪め、子分を連れてその場から荒々しく立ち去った。フリットウィックは頑張ってねと言い、教授の部屋へ戻って行く。この場がソフィア達とハリーとロンだけになったところで、ロンが嬉しそうにソフィアの方を向いた。
「実は、マルフォイがネビルに意地悪して思い出し玉を奪ったんだよ。それをハリーが取り返すために箒に乗ったら、それを見たマクゴナガルにシーカーに抜擢されたんだ! しかも、それだけじゃないんだ。なんとマクゴナガルがニンバス二〇〇〇をくれたんだよ! ハリーに! ……あっでも、この事は絶対内緒だよ。特にクィディッチの連中にはね」
「ネビルが誰だか分からないけど……あー、おめでとう?」
シーカーがもう一人この場にいることは誰も口には出さなかった。ソフィアが苦笑いしているのにも気付かず、ハリーとロンは笑いを噛み殺しながら箒を大事そうに抱えて立ち去った。
「セドだって、シーカーに選ばれたのに、箒なんて貰ってないわ。不公平よ」
「選手に大切なのは箒じゃなくて腕だよ、だから負けるつもりは全くないんだ……僕のために怒ってくれて有難う」
不満げに頬を膨らませ、口を尖らせるソフィアにセドリックが笑いかけた。セドリックにしては珍しく闘争心溢れるコメントにソフィア達も思わず笑った。
「よしっ! さっさと朝飯食っちまおうぜ! 英気を養う必要があるからな、シーカー殿は」
ギリアンがにっかりと笑ってセドリックと肩を組むと、ぐいぐいと大広間の方へ歩いて行った。ギリアンなりの励まし方だろう。残されたソフィアは、レティとマルタに向き直った。
「私たちも何かセドリックにしてあげられないかしら? ハリーに箒で、セドリックに何も無いなんておかしいわ!」
マルタが手を上げた。
「発言を許しましょう、マルタさん」
レティは勿体ぶってマルタを指差した。
「夏休みの旅行でね、日本に行ったんだあ。お守りっていうものを渡してね、勝てるよーにお祈りするんだって!」
こそこそと、秘密話のようにマルタは言った。
「作ってみよお」
悪戯っぽく笑うマルタに、ソフィアは目を輝かせた。レティも乗り気なようで身を乗り出す。
「良いわね、まずはお守りがどんなものかしっかり調べるところからね」
レティの発言に、頷いた三人はすぐに踵を返して図書館に急いだ。大切な友人のために何かしてあげたい、お祝いしてあげたい。その一心で、朝食も忘れてソフィアたちは本探しを開始した。
prev / next