▼ おかしな時間割2
「ウィーズリーと何を話してたの?」
「グリンゴッツが銀行強盗にあったらしくて」
「闇祓いは忙しくなるね、アスターさんたちは大丈夫?」
眉を下げたセドリックに、「気にしないで」と首を振った。それより時間割はどうだったのと聞けば、話はすぐに新学期の授業の話になった。
「やっぱり、選択科目を全部取ることにしたんだ」
「でもセドリック……クィディッチの選抜試験受けるんでしょ? 十二科目も受けたらパンクしちゃうわ」
「練習は週三日だから他の空いてる時間は全部勉強漬けになりそうだよ」
苦笑したセドリックにギリアンはやめとけば良いのにと呆れ顔だ。ぐるりと目を回し、態とらしくため息をついている。セドリックの時間割を芝居がかった仕草で掲げて見せた。
「勉強漬けどころじゃないさ、今日のセドリックの時間割見たか? 九時に占い学、もう一つ九時に古代ルーン文字学、そして更に九時に数占い学だ」
「セドリックはいつから三人になったの?」
不思議そうに首を傾げたマルタに他の皆も同じようにセドリックへ視線を向けたが、当の本人は肩をすくめ曖昧に笑うだけだ。
「私、セドリックが古代ルーン文字学をとるのに五クヌートかけるよお」
「じゃあ私は占い学ね」
ソフィアとマルタは一体どちらの授業に参加するのか賭けることにした。セドリックが困ったように笑った。
「それより、ソフィア。マグル学がホルト先生じゃないなんて本当にかわいそうね」
レティがにやにやと笑いながら言った。気にしいたことへの指摘に思わず唸る。魔法生物飼育学の方が楽しそうだから余計に憂鬱だ。ハンサムな先生の授業を受ける予定が、初老の女性の退屈そうな授業。ホルト先生はハンサムなだけじゃなく、マグル学の夏休みの宿題なんて映画館で映画を見てみろだとか電車に乗れだとかクールな授業をすると聞いていたのだから、余計にソフィアは残念だった。
「でも、バーベッジ先生もマグル学研究において優秀な方らしいよ」
「あら、ソフィアは純粋にマグルのことを学びたいから履修したんじゃないんだもの。そんな慰めナンセンスだわ」
セドリックの慰めにレティは紅茶を一口飲んだ後鼻で笑った。それに対して苦笑いするセドリックを慰めるようにギリアンが笑いながら肩を組む。
「ハンサムなお前と履修できるってだけじゃ、動機としては不十分みたいだな。ガッカリするなよ」
「やめろよ、ギリアン」
照れているのか怒っているのか、どっち付かずな態度でセドリックは恥ずかしそうに俯いた。「あなたと授業受けるのは楽しみなのよ!」とソフィアが慌てて言うものだからギリアンはいっそう大笑いした。
「そろそろ移動した方が良さそうだね」
セドリックの言葉にみんな頷いた。占い学の授業は北塔の最上階でやっている。大広間からはゆうに十分はかかるので、いつもなら食後の紅茶を飲みながら話をしている時間だったがマルタを除いた四人は席を立った。マルタが呑気に「がんばれえ」と緩やかに笑っているのをレティが恨めし気に見た。
「占い学に出ることにしたのね!」
ソフィアが隣に並んで歩くセドリックを見上げて言う。セドリックは「まあね」と曖昧に頷いて肩をすくめた。セドリックの鞄は見るからに重そうで、どうやら数占い学や古代ルーン文字学の教科書まで入っているらしい。直前まで出席する授業を決めかねていたとしたら、普段のセドリックらしくないとソフィアは思った。
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