immature love | ナノ


▼ おかしな時間割1

「よう、ソフィア」

 揃った二つの声に振り向けば、燃えるような赤毛のよく似た二人組。双子は同じ制服を着てしまえば、区別をつけるのは困難だった。フレッドが日刊預言者新聞を片手に掲げ手を振っている。普段であれば、新聞ではなくクソ爆弾を掲げているはずだ。ソフィアは首を傾げた。

「アスターおじさんとおばさん、大忙しじゃないか?」

「何かあったの?」

 ジョージの言葉に血相を変えてソフィアは双子に歩み寄る。新聞には一面の見出しこそないものの、目立つ場所に一つの事件が書かれていた。『グリンゴッツ侵入さる』事件の内容は、紙面一面を飾ってもおかしくはない大事件のようだ。グリンゴッツに銀行強盗するなんて、どんな恐ろしい魔法使いなのだろう。

「ママとパパが怪我するようなことにならないと良いけど……」

 心配そうにため息をつきながらソフィアは言った。

「怪我するどころかすぐ逮捕するに決まってるさ、なにせあそこにはマッド=アイとかスクリームジョールがいるんだろ?」

「死喰い人の大半を捕まえた連中だってパパが言ってたぜ」

 フレッドとジョージが励ますように明るく言う。

「そうね、それにトンクスも闇祓いになったのよ。この世の闇の魔法使いは全員アズガバン送りだわ」

 ソフィアは肩を揺らして笑った。以前トンクスからきた手紙には、マッドアイを師匠とし充実した闇祓い生活を送っているとあった。

「そういえば、二人とも変わらずビーターなの?」

 ソフィアの疑問に双子は揃って眉を上げた。

「僕たちがクィディッチのメンバーから外れたなんてことがあったら」フレッドが言った。

「ウッドがトチ狂ったか試合を諦めたってことさ」ジョージが言った。

「僕たち以外に最高のビーターなんていないだろ?」

 揃えた双子の声に、ソフィアは思わず声を出して笑った。そんなソフィアに双子は不満そうだが、それもそうねと頷いたソフィアを見て満足したようだった。

「ただ、問題はシーカーだ」

「去年のスリザリン戦は最悪だったな、ウッドが血眼になってシーカー候補を探してるよ」

 思い出したように顔をしかめた双子は、ソフィアが「でも今年は勝つんでしょう?」と悪戯っぽく聞けば、にっこりと白い歯を見せて笑った。

「ああ、勝つに決まってるさ」

「もし勝ったらお祝いしてくれよな」

「当たり前じゃない。スリザリン戦は十一月でしょう? それまでに考えておいて」

「言ったな、約束だぜ」

 ジョージがグリフィンドールのテーブルからリーに呼ばれた。この場は解散かと思いきや、フレッドが残ったのでソフィアは首を傾げた。

「どうしたの? フレッド」

「いや、お祝いだけどさ……あーいや、何でもないよ。絶対忘れないでくれよな」

 珍しく歯切れの悪いフレッドは、誤魔化すように笑うとソフィアの髪をくしゃくしゃとかき混ぜるように撫でる。ソフィアの悲鳴はおかまいなしだ。髪が乱れたと憤るソフィアを置いて、フレッドは呼ばれるままジョージとリーの元へと歩いて行った。

 髪を手で撫で付け、頬を膨らましたソフィアはハッフルパフのテーブルへ急いだ。たっぷりと砂糖をかけたオートミールを想像しただけでお腹は減る。マルタたちが席をとっておいてくれたようで、トーストをかじりながらマルタはソフィアへと手を振った。その隣で、レティが呆れたようにマルタが落としたナプキンを拾っている。


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