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▼ 組み分けの儀式3

 組分けは残り二人になり、ロンは青ざめていたが案の定グリフィンドールに組み分けされた。嬉しそうに立ち上がってハリー達の方へと駆けて行く。ハッフルパフに来てくれなかったのは残念だが、もしロンが来たらグリフィンドールに入れなかったことを引きずりそうだとソフィアは思った。最後にザビニ・ブレーズがスリザリンに組み分けされたところで、ダンブルドアが立ち上がった。

「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 皆に楽しい知らせがある。今学期からうれしいことに新任の先生を一人お迎えすることになった。マグル学を引き受けてくださったチャリティ・バーベッジ先生じゃ! 昨年度代理の先生であったヘンリー・ホルト先生はお辞めになり世界のマグルを見て回る旅に出た、最初の国は日本と言っていたからホルト先生のファンだった女子生徒は手紙を出してみてはどうかの」

 パラパラとあまり気のない拍手が起こった。後任のバーベッジは見るからにつまらなそうな女史だったから、この反応も仕方ない事だろうとソフィアは思った。去年マグル学の教鞭を取っていたヘンリー・ホルトは渋みのあるハンサムな英国紳士だった。彼にマグル学を教わりたかったから履修したのにとソフィアもがっくりと肩を落とした。セドリックは元々科目自体に興味があったのだろう。ソフィアの姿を見てどう励ませばいいか分からないと困ったように視線が右へ左へと忙しなく動いた。

「先生が変わるくらいでガッカリするなら、魔法生物飼育学をとればよかったんだ」ギリアンが嫌味たっぷりに言った。

「ケトルバーン先生があんなに身体ボロボロな姿みたら、怖くて取ることなんて出来ないわよ」

 ギリアンの言葉にソフィアは落ち込むのも忘れ、軽い悲鳴のように否定した。シルバヌス・ケトルバーンは片方の腕と片方の足の半分以外の手足がなかった。先生の授業では何人もの生徒が先生のように手や足がなくなったと生徒の間ではまことしやかに噂されている。彼の趣味がドラゴンの聖地訪問という噂まであった。ホグワーツには頭のおかしな先生が多いが、ケトルバーンはその筆頭だとソフィアは思っていた。

「そして、もう一つ嬉しいお知らせじゃ。一年間休みを取られていたクィレル先生が帰ってきた! 今年度からは先生の希望で闇の魔術に対する防衛術を担当してくださる」

 帰って来たクィレル先生は上座に座っていたが、姿がだいぶ変わっていた。大きな紫のターバンを巻いている。ハンサムというほどではないが、大人しく真面目そうな好青年のような姿だったのに、今では目元も痙攣している。酷い変わりようだ。

「なにあのターバン? センスないわね」

「エキゾチックなんじゃないかしら……?」

 レティの厳しい一言にソフィアは戸惑いながら精一杯のフォローをしたが、声音に怪訝さが含まれていることを隠しきれはしなかった。セドリックは「スネイプは今年も防衛術の先生にはなれなかったんだ」と首を傾げている。

「では、最後に二言、三言、言わせていただきたい。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

 ダンブルドアは席に着き、出席者全員が拍手し歓声を上げた。目の前にある大皿が食べ物でいっぱいになっている。ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、ゆでたポテト、グリルポテト、フレンチフライ、ヨークシャプディング、豆、にんじん、グレービー、ケチャップ、そして何故かハッカ入りキャンディーが置いてあった。ハッカ入りと知らずに食べて、甘味と辛味の共存したなんとも言えない味で食事を終えてしまった苦い思い出がソフィアにはあった。

「ポテト食べる? 取ってあげるよ」

 ソフィアの近くにあった大皿を見つめる一年生のハンナ・アボットに声をかければ、恥ずかしそうに皿を差し出して有難うとお礼を言った。彼女の隣にいたふわふわとしたブロンドヘアの男子は、アーニー・マクラミンですとにこやかに自己紹介して、自分も取ってもらってもいいですかとソフィアに話しかけた。

「あら、アーニー?」

「やっと気づいてくれた」

 マクラミン家といえばアスター家とも多少交流があり、お互い小さい頃ではあったが彼の家のパーティーに呼ばれたことがあったのだ。マグルに肯定的な意見を持つアスター家はマルフォイ家などを筆頭に純血主義の家とは絶縁状態であったが、ダンブルドアにも肯定的なマクラミン家とは良好な関係にあったからだ。

「ずっと気づいてくれないから、忘れられたかと思ったよ」

「そんな訳ないじゃない。ほら、ポテトよ」

 アーニーの言葉に被せるようにソフィアはたくさんのポテトをアーニーの皿に盛り付けた。アーニーはその量に悲鳴をあげ、周りの一年生に少し分けた。ハンナが一瞬嫌そうな顔をしたが、曖昧な笑顔でアーニーからポテトを貰っている。その様子を見て、ソフィアは悪いことをしたと少し反省した。一人ポツンと座っていた女の子、エロイーズ・ミジョンは、ポテトをきっかけに話に入れて嬉しそうだった。


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