▼ 九と三/四番線6
「ところで、選択科目は何にしたんだ?」
ギリアンの言葉で話は一気に新学期から始まる授業の話になった。三年生から好きな授業を一部だけ選択して受講することができるようになるのだ。
「私はマグル学と占い学を取るつもりよ」ソフィアが言った。トンクスの手紙を思い出し、ハリーとの握手で高揚していた気持ちが急降下していくのを感じた。
「マグル学なんて退屈そうだな。俺は占い学と魔法生物飼育学にしたよ」ギリアンが目をぐるりと回して言った。
「私はルーン文字学と魔法生物飼育学だよ! ギリアン一緒だね」
「マルタ、私も魔法生物飼育学は一緒だわ。他は、私も占い学とにしたの」
「じゃあ、ルーン文字学は1人で受けないといけなくなるかもしれないのかな」
やはり占い学は大多数がとるようだ。マルタは一見頭が良くないように見えるが、実は大変頭がいい。一番難しそうなルーン文字をとるあたり、学習意欲も十二分だ。ソフィアは二年生の時にマルタからルーン文字を取らないかと誘われたのだが、ハッフルパフの上級生にあれは難しいからやめといたほうがいいという助言のもと遠慮させて頂いた。この時トンクスにも手紙で相談していればと思うと、悔やんでも悔やみきれない。
「ところで、セドは何を選択したの?」
「えっと……全部かな」
セドリックが苦笑いをした。若干後悔しているんだと冗談めかして付け加える。
「嘘でしょう?」
マルタが悲鳴をあげた。セドリックが優等生であることはハッフルパフ生の間では共通の認識だったが、度が過ぎるだろう。ソフィアも、あんぐりと口を開けて固まった。セドリックが占い学を取るという話は以前聞いていたが、まさか他の科目もすべて希望を出していたとは到底思わないだろう。
「もし厳しかったらスプラウト先生に相談するよ」
セドリックは苦笑いをして、「それより、みんな何で占い学を選んだの?」と話を切り替えた。
「だって、占いなんてちょっとワクワクしない?」
レティが少女のようにクスクス笑うのでつられてソフィアも笑った。いつだって女の子は占いと恋バナが大好きなのだ!
「やめてくれよ、一気に占い学を取るのが嫌になった」
げんなりするギリアンをよそに、ソフィアとレティはクスクス笑ったままだ。
「でも、トレローニー先生ってやばいらしいよ」
冷や水をかけるようにマルタが言った。先日トンクスから「今すぐやめたほうがいい」という手紙がきたばかりだが、どうやら事実らしい。
「良いのよ、授業で紅茶を飲める授業ってだけで素敵だもの」
レティが言うと様になるとソフィアとマルタは笑った。さすが純血一族だ。紅茶が好きだのダンスパーティーがどうだの、お嬢様発言が大変似合う。服だって、ホグワーツでこそ同じ制服を着ているが、私服はどう見ても育ちのよさげなワンピースなどなんだから。いつも流行に敏感な彼女は二人にとってファッションリーダーのようなものだった。
「僕も茶葉占いとかしてみたいな。一度、教科書に目を通した時に自分を占おうとしたけど、ただ茶葉がへばりついてるようにしか見えなかったしね」
苦笑いするセドリックに、もう予習したのかとギリアンが素っ頓狂な声をあげたので皆笑った。
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」
車内にアナウンスが聞こえた途端、全員で慌てて座席に広げていたお菓子をしまった。いつの間にか列車は停車していた。コンパートメントを出れば通路は凄い混みあっている。皆押し合いへし合いながら列車の戸の向こうの外を目指していた。
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