immature love | ナノ


▼ 九と三/四番線3

 パーシーが遅れてこちらに歩いてくるのも見えたが、驚くべきことに、もうホグワーツのローブを着ている! 真新しいローブの左胸には、先ほどもつけていたPバッジがきらきらと輝いていた。なぜか先ほどよりも輝きが増しているが、磨いたのだろうか。磨きすぎていつかバッジの表面の文字が消えてしまうのではないかとソフィアは思った。

「ねえ、ママ。誰に会ったと思う? 今列車の中で会った人、だーれだ?」

「駅でそばにいた黒い髪の子、覚えてる? あの子はだーれだ?」

 双子は浮かれたように声を弾ませて、ウィーズリーおばさんに質問した。

「だあれ?」

 ウィーズリーおばさんは答えを当てる気がないらしい。質問したので双子の答えをおとなしく待つことにした。黒髪の子なんてたくさんいるが、何故わざわざウィーズリーおばさんに知らせようとしているのだろう。フレッドは勿体ぶったように喉の調子を整えると、声を高らかに答えを明かした。

「ハリー・ポッター!」

 ついこの間、ギリアンと似たような会話をしたばかりだ。またしても遭遇できなかったことに、ソフィアはがっかりした。もしフレッドとジョージと一緒にいれば、ソフィアは今度こそ知り合うことが出来たかもしれない。一方で、双子はソフィアがあまり反応しなかったことに不満げに眉をひそめた。ロックハートを前にした魔女のように叫び出すとでも思っていたのだろう。

「ソフィア、君のために提供したようなもんだぞ」ジョージが言った。

「貴重な情報を前に間抜け面とは……ハッフルパフの模範とも言える行いですな。ハッフルパフに五点やろう」フレッドがスネイプの口調を真似た。

「私の反応が鈍かったのと、ハッフルパフは別の話でしょ」

 ソフィアは頬を膨らませた。反応が悪かったことを申し訳ないと思ったが、ハッフルパフを馬鹿にされるとなれば別問題だ。フレッドがにやにやと笑ってソフィアの頬を片手で掴むと空気がプシュウと間抜けな音を立てて抜けていった。ジョージがけらけら笑っている。

「ハリーは『例のあの人』がどんなだったか覚えてると思う?」

 フレッドが好奇心を隠しきれずにソフィアへ言うと、ウィーズリーおばさんが急に厳しい顔をした。

「フレッド、聞いたりしてはダメよ。絶対にいけません。入学最初の日にそのことを思い出させるなんて、かわいそうでしょう」

 ウィーズリーおばさんは、フレッドを叱るように言った。その言葉にソフィアは少しだけドキリとした。そして、ダイアゴン横丁で握手を求めて話しかけなくて本当に良かったと改めてセドリックに感謝した。いよいよ、ソフィアはセドリックに足を向けて眠れなくなってきた。

「大丈夫だよ、そんなにムキにならないでよ」

 笛が鳴った。汽車がそろそろ発車するのだ。説教を終わらせるぞと言いたげに、ジョージが「発車しちゃう! 急げ!」と声をあげた。ジョージの言葉に急かされ、「急いで」というウィーズリーおばさんの声に急かされて、ロンが急いで列車によじ登る。説教から解放されて一目散に逃げていく双子を尻目に、ソフィアはおばさんとおじさんに思いっきりハグをした。

「今日は私も一緒に送ってくれて有難う! 本当に嬉しかったわ」

「まあ! 気にすることなんてないのよ!」

「そうさ、君は私たちのもう一人の娘みたいなもんだ」

 ウィーズリーおばさんがソフィアの髪をしっかり撫でた。にっこりと、優しさに溢れた笑みを向けられてソフィアは堪らず下を向いた。胸の前で揺れる髪に指を巻きつけながら、「ありがとう……」と声を絞り出してお礼を言う。はにかんで笑うソフィアに、ウィーズリーおばさんは「発車しちゃうわよ!」と背中を押して列車に乗るよう急かした。


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