immature love | ナノ


▼ 九と三/四番線2

「フレッド、次はあなたよ」

「フレッドじゃないよ、ジョージだよ。まったく、この人ときたら、これでも僕たちの母親ってよく言えるな」

「あら、ごめんなさい。ジョージちゃん」

「冗談だよ、僕がフレッドさ」

 フレッドとジョージが、怒られる前に退散しようと言わんばかりに急いで柵の方へと行く。双子につられてソフィアもジニーに手を振って、慌ただしくカートを押した。後ろでウィーズリーおばさんが「気をつけて!」と叫ぶのではーいと振り向いて返事をしながら加速する。ソフィアの様子を見て、ウィーズリーおばさんが「気を付けてって言ったばかりでしょう!」と困ったように腰に手を当てた。

 目線を前に戻せば、視界は、レンガの柱から紅色の蒸気機関車が停車しているプラットフォームへと立て続けに変わった。光を反射するほど磨かれた機関車を見るたびに、ソフィアはホグワーツに戻るのだと嬉しくなる。

 少し先に、フレッドとジョージが立っている。ソフィアを待っていてくれたのだろうか。去年と一昨年も、ソフィアはフレッドやジョージとグリフィンドールの賑やかな面々のコンパートメントの仲間に入れて貰っていた。折角待っていてくれたのに申し訳ないなと思いつつ、ソフィアは二人に声をかけた。

「私、ハッフルパフの子達と約束してるの。だから今年からコンパートメントは別になっちゃうわ」

「ああ! ソフィアが俺らよりもハッフルパフの奴らを選んだ!」ソフィアの申し出に、フレッドは大袈裟に肩を震わせて泣く真似をした。

「泣くなフレッド、すぐにソフィアだって俺たちがいかに大事か気づいてくれるさ……」ジョージがフレッドの肩を抱いて慰めた。

「そんなに悲しむなら、今後は私のことをもっと丁重に扱ってほしいわ」

 異常なくらい非難がましい双子に、大袈裟だとソフィアは笑った。

 後ろから「やあ」と声をかけられた。ついこの間ダイアゴン横丁で聞いたばかりの声だ。セドリックは、もう制服に着替え終えたらしい。手を挙げてにこやかに挨拶をした。

「みんな久しぶりだね。夏休みはどうだった? ソフィア、レティ達は三両目にいるよ」

 セドリックがにこやかに挨拶するのに対し、フレッドはふんと鼻を鳴らして嫌味たらしく眉を上げた。セドリックはいつだって優しくて親しみやすく接しているのに対して、フレッドはあまりセドリックに対して友好的ではない。(セドリックの方がモテることを僻んでいるのだろうと、ソフィアは思っていた。)オッタリー・セント・キャッチボールに同じく家があるのだから仲良くなっても良いのにとソフィアは思った。一方で、ジョージはセドリックに対して別に何も思うことはないらしく、朗かに挨拶した。

「ありがとうセド。またすぐ後でね、フレッド、ジョージ」

 セドリックがカートを押してくれるので、隣に並びながら双子に手を振る。二人は片手を上げて、すぐ人混みの中へ消えてしまった。

 車両を進んで行くと、三両目のコンパートメントの一画にはすでにレティやマルタ、ギリアンがいた。セドリックに手伝ってもらいながら、なんとかトランクをコンパートメントの上の棚に収め終え、慌ててプラットホームに戻る。ウィーズリーおばさんやおじさんが待っているはずだ。ホームにはフレッドとジョージ、パーシー以外は全員揃っていた。もしかして彼らはまだ空いてるコンパートメントを探しているのだろうか。

「フレッド! ジョージ!」ソフィアは声を張り上げた。

「今行くよ、ソフィア」

 ホームにいると思いきや、ホームではなく列車の中から声がした。フレッドが窓から身を乗り出して手を挙げている。後ろにはジョージも顔を覗かせていた。双子は列車から飛び降りると、こちらへ駆け寄ってくる。ウィーズリーおばさんは、ちょうどロンの鼻を擦ることに夢中だった。「ママ、やめて」とロンが逃げようともがいている。双子が近寄ってくるのが見えたのか、ロンの抵抗が増した。

「あらあら、ロニー坊や、お鼻になんかちゅいてまちゅか?」

 フレッドがにやにやと笑いながらロンの鼻を触ろうとする。案の定、からかう気満々のようだ。ハンカチからなんとか逃れたロンは、「うるさい!」と言って怒ってしまった。


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