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▼ 九と三/四番線1

 トルコ石色の旧式なフォード・アングリアからトランクを五個おろす作業は大変な労力が必要だ。なぜこんな小さな車にたくさんのトランクと人とフクロウが乗るのか未だにわからなかった。(かつて魔法がかかっているのではないかと質問した時に、ウィーズリーおじさんが大袈裟なくらいに慌てて否定したので、真相を知らない方がいいかもしれないと思っている。)トランク1つ下ろしただけで肩で息をするソフィアの頭を、誰かがポンポン叩いた。

「ソフィア、学校へ着く前に過労死するんじゃないか?」

「明日の朝刊の見出しはパパが生徒を過酷労働させたことで決まりだな」

 フレッドとジョージだ。そっくりの顔が左右からソフィアを覗き込む。

「ウィーズリーおじさんをアズガバンに入れるわけにはいかないわ!」

 大げさにソフィアは慌てた声を出した。ソフィアはウィーズリー家とは長年家族ぐるみの付き合いだ。長年双子の悪戯やジョークの標的はソフィアだったのだから、ジョークの1つ位は華麗に流せるようになるものだ。彼らの発言は、翻訳すると「荷物運び大変だろ、代わろうか?」である。彼らのジョーク混じりの優しさに笑いながら頷いたソフィアは、双子にかわってもらう。近くにいたジニーがすかさずソフィアと手を繋いでくるものだから、愛らしさに堪らず頬が緩んだ。

「母さん、そろそろ急がなくちゃいけないよ。Pバッジの監督生が遅れるなんてことあってはいけないからね」

 頭上の大時計が指すのは一〇時二〇分、列車にはまだまだ間に合う時間だ。パーシーはまだホグワーツの制服も着ていないのに、私服のベストの左胸には「PREFECT」と書かれたピカピカの赤いバッジが輝いている。今からつけているなんてとソフィアは呆れたように目をぐるりと回した。

「おお、パーシー! 君、監督生になったのかい?」フレッドは大げさに驚いた。

「知らなかったじゃないか、言ってくれよ」ジョージがパーシーを小突く。

「まって? 私、似たようなことを聞いたことある気がするわ!」

 ソフィアがくすくすと笑いながら言った。実際その通りで、ソフィアは今日だけで五回は「監督生」という単語を聞いたと思っている。ソフィアの言葉に「兄弟の俺らを差し置いて、知ってたっていうのかい」とフレッドとジョージがわざとらしく驚いた。ショックを受けたように手を口に当てているのがわざとらしい。パーシーは眉が今にもくっつきそうなほど、眉間に皺を寄せていた。隣でジニーがくすくす楽しそうに笑っている。
「いや、俺も聞いたかもな、二回かな……」ジョージが首を傾げて言った。

「一分間に、一、二回かな……」フレッドが言った。

「だまれ」

 パーシーが鼻息荒く言った。パーシーは、今にもグリフィンドールから五十点減点と言ってやりたいような表情だった。ハッフルパフへの減点なんて、実際にやりかねない様子だったので、ソフィアはそそくさとパーシーから離れる。双子は飽きもせずこんな会話を夏休み中何回も繰り返してるのだろうから、パーシーも良い加減に監督生自慢をやめればいいのにとソフィアは思った。

「それにしてもマグルで混み合ってるわね。何番線だったかしら?」

 ウィーズリーおばさんが駅をつかつかと歩きながら、こちらを振り向いて聞いた。

「九と三/四番線よ」

 ジニーがウィーズリーおばさんの問いに答えた。ソフィアと握っていた手を軽く引っ張って、「ソフィア、私も行きたい……」と悲しげに言った。

「ジニーは来年いけますからね、はい、パーシー、先に行ってちょうだい」

 ウィーズリーおばさんがジニーをあやしながらどんどん指示を出す。パーシーはまっすぐと柵の方へ歩いて行った。周りのマグルは、忙しそうに行き来していて、柱に消えていくパーシーに気づく様子もない。一体マグルは何を見て生活しているのかしらとソフィアは不思議に思った。全員とても目が悪い。


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