immature love | ナノ


▼ ダイアゴン横丁5

「あれ? ハグリッド!」

 店に入ってきた続いての客にソフィアたちは驚いた。ぼうぼうと長い髪やモジャモジャの髭、真っ黒な瞳、そして何より未だに見上げなくてはいけないくらい高い身長。ホグワーツの鍵の番人であるルビウス・ハグリッドだ。

「おまえさんもアイスを買いに来たんか?」

 頷きながら、まだメニューを決めるのに時間がかかるからと注文を譲ると、ハグリッドは大きな体を丸めてメニューをじっと見つめた。瞳はキラキラと輝いている。

「おまえさん達は何がええと思う? ハリーっちゅう新入生に買ってやりてえんだ。不憫な子でなあ、マグルの連中からろくに食べもんを貰えなかったにちげえねえ。マッチ棒みてえに細いんだからな」

「このナッツ入りのチョコなんてお勧めよ。あと、ラズベリーも爽やかで美味しいわ!」

 ハリーという単語にドキマギしながらソフィアが答えると、ハグリッドはフォーテスキュー氏にこの二種類を組み合わせ、ダブルサンデーを注文した。

「ありがとう。じゃあな、おまえさんら」

 ダブルサンデー(ハグリッドが持つとまるで一口サイズに見える)を受け取ったハグリッドは、手を振るとドシドシと店から出て行った。この後すぐハリー・ポッターと会うのかもしれないと思ったソフィアが首を伸ばしてハグリッドの行き先を見ようとしたところで呆れたレティが注文カウンターへ引きずっていった。

 フォーテスキュー氏からサンデーを受け取ったソフィアたちは、席へ戻る。待っていた二人はすでに完食しており、セドリックは買ったばかりの教科書を読み、ギリアンは手持ちぶささにコーンスリーブを折りたたんでいる。口周りは綺麗になっていた。ソフィアは急いでセドリックとギリアンに、先ほどハグリットと出会ったことを報告した。

「ハリー・ポッターが、私のお勧めのサンデーを食べるのかもしれないわ!」

 ソフィアが興奮したように締めくくると、ギリアンは返事の代わりにため息だけついた。目をぐるりと回す。

「あなたはいつから口の代わりに目でお喋りするようになったの? ギリアン」

 ソフィアはギリアンに向けて鋭く言った。

「俺は何も言ってないだろ」ギリアンは付け足した。「まだね」

「ホグワーツに行けば会えるだろうけど、この後も見かけたりするかもしれないね」

 セドリックはにこやかな笑顔を浮かべて会話を戻した。ソフィアに紙ナプキンを差し出す。どうやら、ソフィアの口周りも先ほどのギリアンと同様にアイスで汚れているらしい。ソフィアは慌てて拭いて、恥ずかしさから話題を逸らすことにした。

「羽ペン専門店へ行っても良い? インクが切れてたのをすっかり忘れてたわ」

「僕も羊皮紙を買い足したかったから一緒に行くよ」

「私たち、ポタージュの鍋屋に行かないといけないから、それぞれ買い物を済ませましょう。漏れ鍋で夕食を一緒にとるのはどう?」

 ソフィアとセドリックは羽ペン専門店へ、残る三人はポタージュの鍋屋へと行くことになった。夕食で合流しようというレティの提案に全員頷く。煙突飛行粉で来ていると時間を気にしなくて良いので、五人で夕食を食べることにした。

 一足先に食べ終わったソフィアは、早く用を済ませてしまおうとセドリックと共にパーラーの下から抜け出し羽ペン専門店へと向かった。店内はつんと鼻をつく古びた臭いが充満して、ソフィアは家の屋根裏部屋を思い出した。あの部屋も書物や巻物ばかりでインクのにおいが充満していた。


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