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▼ クィディッチ・ワールドカップ6

 一人の魔法使いが飛び込んで来た。ルード・バグマンだ!  ソフィアの世代ではないが、イングランド代表にもなったウィムボーン・ワスプスの有名な選手だった人だ。

 興奮きった様子のバクマン氏は、喉にソノーラスをかけ、スタジアムの観客に向かって呼びかけた。その声は。大観衆のざわめきも打ち消すように、スタジアム全体に響き渡った。

「レディース・アンド・ジェントルメン……ようこそ! 第422回、クディッチ・ワールドカップ決勝戦に、ようこそ!」

 観客が叫び、拍手した。まるで空気が震えているかのような、大熱狂だ。何千と国旗が振られ、各々が勝手に歌ってハモらない両国の国家が会場をさらに盛り上げた。貴賓席正面には、巨大なスコアボードがあり「ブルガリア 0 アイルランド0」と書いてある。

「さて、前置きはこれくらいにして、早速ご紹介しましょう……ブルガリア・ナショナルチームのマスコット!」

 赤一色の上手席がワッと盛り上がった。国旗が振られ、チラチラと炎が揺れてるようにさえ見える。「あーっ! ヴィーラだ!」ウィーズリーおじさんの慌てた声が聞こえた。

 質問する間も無く、100人の女性がピッチに現れた。ヴィーラーは美しい女性だった。月の光のように輝く肌で、風もないのにどうやってシルバー・ブロンドの髪をなびかせているのだろうか。

 ヴィーラが踊り始めると、 ソフィアはヴィーラよりも周りを気にしなくてはいけなくなった。前の席のハリーとロンが座席から身を乗り出している。離れた席でジョージが観客席にダイブしようとしているのを、フレッドが止めていた。

 女性は全員平気なようだし、ウィーズリーおじさんや他の大人の魔法使いも身を乗り出してはいない。隣を見れば、立ち上がってはいないもののシリウスも陶酔したような表情でヴィーラの舞に見入っていた。

「シリウス? 一体みんなどうしちゃったの?」

ソフィア がロンが席から間違っても落ちないように服の裾を掴んでおきながらシリウスに話しかけた。ハリーはハーマイオニーが面倒を見てくれている。シリウスは、ぼんやりとした表情からはっと我にかえると、一転して困ったように眉根を寄せた。

「ヴィーラは、男性を魅了する特性を持つ魔法生物なんだよ。いや、
心から愛する者がいたり、耐性があれば効かないんだが……私は、ヴィーラに弱くてね。話しかけてくれてありがとう」

 シリウスが肩をすくめた。シリウスがヴィーラに弱いなら、ロンは一体どうなってしまうのか。帽子の、アイルランドの三つ葉をむしり取っている姿を見ながら ソフィアは思った。

 それよりも、「愛する者がいたり」という言葉が引っかかり、ヴィーラに魅了された様子を見せないフレッドを視界から追い出した。このこみ上げる恥ずかしさは、自惚れによるものではないだろう。

 ヴィーラが踊りをやめると、会場中――正確には、会場にいる男性客全員が――ブーイングしていた。

「さて、次は……アイルランド・ナショナルチームのマスコット!」

 バグマンの声が轟いた次の瞬間、沖波d理と金色の彗星がピッチに音を立てて飛び込んで来た。 まるで素晴らしい飛行術のようにビュンビュンと飛んだそれは、スタンドの上空に巨大な三つ葉のクローバーを形作った。そこから流星群のように、金色の雨のようなものが降り注いだ。 ソフィア のもとに落ちてきた1枚を拾って、目を丸めた。金貨だ! 金貨が降っている!

 上空は、大きな三つ葉のクローバーではなく、たくさんのレプラコーンだと ソフィアは気づいた。赤いベストをきて、手に金色か緑色の豆ランプを持っている。顎鬚の生えた小さな男だが、庭小人ともまた違った。

 マスコットの紹介を終え、バクマンは次々とクィディッチの選手を紹介した。ビクトール・クラムが出てきたときは、ブルガリアの座席がより一層大きな歓声をあげた。なぜかアイルランドを応援しているはずのロンもしきりに叫んでいた。

 最後に出てきた審判が木箱を開け4個のボールをフィールドに放ち、ホイッスルを鳴らした。

「試ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁい、開始!」

 バクマンが叫んだ。 ソフィアもいよいよ試合が始まる興奮で、必死にマフラータオルを片手に持って振り回した。

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