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▼ クィディッチ・ワールドカップ3

 小屋には男性が一人ぼんやりと立っている。この人は、間違いなくマグルだと ソフィアの勘が告げた。3年間のマグル学履修は伊達じゃない。長袖のシャツにジーンズと、明らかに”普通の”マグルの格好だ。

「おはよう、あなたがペインさんかな?」

「ああ、そうだが……おめえさんは?」

 ペインさんは、じろじろと怪しむようにシリウスと ソフィアを見た。同じ黒髪だから親子に見えるかもしれないと ソフィアは一瞬考えたが、このハンサムと血の繋がりを感じさせる顔立ちはしていなかったと一人で納得して苦笑いを浮かべた。

「ブラックだ。テントを二張り、1泊で予約している。いくらだったかね?」

 シリウスはマグルのお金がわかるのだろうかとドギマギして見つめていたが、50ポンド紙幣を1枚渡した。ペインさんは不満そうにお釣りが面倒だとぼやいていたが、シリウスに小銭とキャンプ場の地図をシリウスに渡した。シリウスはお礼を言って、 ソフィアに行こうと声をかけてキャンプ場の門をくぐった。

 風見鶏がつけてあったり、煙突がついていたり、テントの入り口が玄関扉になっていたりと様々だ。クローバーで覆われたテントや、数階建てのものと、明らかにマグル製のテントという言い訳が苦しいものも中にはある。

 進む中で、ホグワーツの友人もいた。一際豪華なテントは、やはり大金持ちのレディの家族のテントであった。他にもハッフルパフ生では、アーニーやリーアンとも会った。

「 ソフィア!」

 比較的マグルらしい――電飾と言ってギリギリ誤魔化せるような装飾が施された――テントの前を通りかかった時、聞き慣れた声に呼び止められた。テントの入り口から顔を出したのはセドリックだった。

「おはよう、 ソフィア も来れることになったんだね。会えると思ってなかったから……とても嬉しいよ。シリウスも会えて嬉しいです、元気ですか?」

 セドリックは嬉しそうに駆け寄ってくる。

「私はオマケかい」

 シリウスがからかうように言うと、セドリックは耳を赤くして首を振って慌てたように否定した。

「シリウス、この前はプレゼント有難うございました」

「ああ、気に入ってもらえたならと嬉しい。役立ててくれ。 ソフィア 、私たちのテントはこの先にあるようだから先に行っているよ。この道をまっすぐだ、いいね?」

 シリウスは、そう言ってキャンプ場を進んで行った。二人でシリウスに手を振ってから、改めて向き直る。

「セドリックは何を貰ったの?」

  ソフィアは興味津々で聞いた。 ソフィアが5年生の学期末最終日にシリウスから渡されたプレゼントは、以前夢で見た濃紺の恐ろしく高そうなドレスだった。ドレスの美しさにうっとりするのも束の間、セドリックとダンスを踊ることになるのかと心臓が変な音を立てたことはよく覚えている。

「これだよ」

 セドリックは首元の繊細な鎖のネックレスを引っ張って、シャツの内側から何か出した。金細工で装飾された、小さな思い出し玉のようなガラス玉が2つぶら下がっている。

「ネックレス?」

「片方を壊すと、もう片方の場所に移動できるんだ」

 セドリックが二つのガラス玉を指差して言った。とても便利な魔法道具をシリウスからプレゼントされたらしい。 ソフィアは感心して、しげしげと見つめた。ガラス玉の中では、黒い靄のようなインクがゆらゆらと泳いでいる。

「移動キーみたいなものってこと?」

「……というよりは、ペアだから姿をくらますキャビネット棚に近いかな? 去年、ルーピン先生が授業で紹介していたやつ」

  ソフィアが心当たりがないと言う表情をしているのを察したのか、セドリックは付け足した。記憶の彼方に、確かにルーピンが授業中に言っていたような気がする。

「ふふ、でもそんな便利な魔法道具も1人で2つ持ったままじゃ役に立たないわね」

 からかうように ソフィアが言った。

「じゃあ、君が持っててくれないかな?」

 セドリックは冗談めかしたように言った。 ソフィアは、「ちょうだいって意味で言ったわけじゃないわよ」と苦笑いを浮かべた。 ソフィアのセリフはそんなに図々しい響きを持っていただろうか。

 セドリックはそれでもくれようとしたが、そんな貴重な道具をおいそれと貰うわけにもいかないと ソフィアは頑なに断った。自分のドレスを思い出せば、このガラス玉がどれほど高価なのか、想像するのは難しくない。

 ソフィアはセドリックに別れを告げて、シリウスが向かった方向に歩いた。しばらく進むと、『ブラック様』と書かれた看板と小ぶりのテントが二つ。どちらに入ればいいのかと迷っていたら「こっちだ」とシリウスが顔を覗かせて言った。

 「ボーイフレンドに会えてよかったな」とからかうものだから、 この後ソフィアは10分かけてセドリックはとは友達だとシリウスに誤解を解くための説明をしなくてはいけない羽目になった。

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