▼ グリモールド・プレイス3
「役に立ちそうな情報はあったか?」
シリウスはアルバムのような冊子といくつかのノートの切れ端を持って寝室へとやってきた。ソフィアが首を振ると、シリウスはやれやれと首を振った。
「君のご両親の写真を、このアルバムの中にいくつか見つけたんだ。よければ調べ物は中断して、見てみるか? もちろん、君が見たければの話だ」
不死鳥の騎士団を通してシリウスと知り合ったと両親から聞いていたので、学生の頃からだったという事実にソフィアは驚いた。
2度と会うことが叶わない両親の生きていた時の姿を見るのは辛いだろうか。みぞの鏡の時のように固執してしまいはしないだろうか。若干の不安もあり、伺うようなシリウスの視線にどのような反応をかさえばいいのかソフィアは悩んだが、恐る恐る頷いた。
シリウスはキラキラと輝くような笑みを浮かべると、ソフィアの隣に腰掛けてアルバムを捲った。
「これが私で、リーマス――君も勿論知っているね、去年のDADAの教授だ。ジェームズ、ハリーの父親だ。私たちはいつも一緒に過ごしていた」
シリウスは1枚目の写真で手を止め、4人の若者が映った写真をソフィアに見せた。
シリウスはとてもハンサムだった。少し高慢な、斜に構えたような表情をしている。隣にいる黒髪の人物は、シリウスに説明されずともハリーと縁のある人物だとソフィアは一瞬で分かった。見た目がそっくりだし、ハリーと同じで、後ろ髪がピンピン立っている。
嬉しそうに笑うルーピンは、ボロボロのマントを着てるわけでもなく、他と同じ制服姿なのに何故か見すぼらしく見える。あと、ソフィアに失神呪文をかけた憎たらしいペティグリューの姿もあった。
悲しんでいるのか、懐かしんでいるのか、アルバムを見つめるシリウスの表情から思いを読み取ることはできなかった。シリウスがページを捲ると、シリウスの考えてることに気を配る余裕なんて霧散した。
写真の外へと出ようとしてるが、シリウスに肩を組まれて阻まれている監督生バッジをつけた男子生徒の写真だ。青みがかった緑の瞳を、嫌そうにに歪めている。
「君の父親だ。私たちの二つ上の学年で、監督生だった。よく追い回されたよ。グリフィンドールが点を失った原因は私とジェームズが殆どだったが、殆どはアルバータが減点していた。自分の寮関係なしに減点する恐ろしい奴だった」
シリウスは楽しげに鼻を鳴らした。失礼かとは分かりつつも、シリウスから半ば奪い取るような形で、自身の膝の上へとアルバムを置いた。シリウスは黙ってソフィアの様子を見ている。
知らない生徒ももちろん多くいたが、時々入り込むクレアやドウェインの学生時代の姿にも温かい気持ちになる。たまに、アルバータも映っている他の写真もあった。
ページを捲っていた手が止まる。赤髪の女性と銀髪の女性、そして見覚えのある楽しそうにこちらに手を振る黒髪の女性。彼女のちょこんと上向いた鼻はソフィアと同じ。ソフィアの母親、マーリン・マッキノンだ。
「この2人は?」
左の女性の緑色の瞳に既視感があり、シリウスに聞いた。
「左がリリーだよ、ハリーの母親だ。ジェームズがずっと片思いしていたが、難攻不落だった」
シリウスは当時を思い出したようにクツクツと笑った。10年分、若返ったかのような楽しそうな笑顔だ。
シリウスは、「毎回空振りしているものだから、付き合うことになったと報告を受けた時はエイプリルフールかと思ったよ」と言って、まるで今報告を受けたかのように楽しそうに笑う。
「右がオリヴィアだ。恐らくだが、今はイギリスにはいない。どこかに渡航したと聞いている」
「リリー狙いのジェームズに巻き込まれて、よくこの3人へ話しかけたものだ。あの頃の私たちは、愚かにも女子全員が自分達に好意的だと自惚れていた」
シリウスが懐かしげに写真を見た。最初の写真にいたはずのジェームズが入り込んでいるところだった。
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