▼ 招待状1
フェリックス・フェリシスを貰ってから、ソフィアの記憶は曖昧だ。申し訳ないことに、楽しみにしていたケーキの味もあまり覚えていない。今も、部屋に戻ってぼーっと液体が跳ね回る小瓶を見つめている。
幸運の液体。作るのが非常に困難で、その上リスクが伴う。醸造にも6ヶ月かかると言われて非常に貴重な魔法薬だ。この薬を手に入れられるものは魔法族の中でも限られた人しかいないとスネイプは授業で説明していた。
「これを使えば、セドリックも助けられるかしら」
今年成人を迎えるから、特別なプレゼントだと渡されたこの薬が、ソフィアには救世主のように思えた。これさえあれば助かるとは言わないが、絶対に力になってくれるはずだ。
相談をしたわけでもなかったのに、この液体をプレゼントに選んだ両親に心が温まるようだった。きっと、予知夢の能力で不安に苛まれる日が来る可能性があると知っていて贈ってくれたのだろう。彼らは、 ソフィアの実の父、同じ予知能力を持つ彼の苦悩を間近で見ていたのかもしれない。
小瓶を机の上に置いた時、机の上に先ほど置いたシリウスからの手紙が目に入った。先ほどまで早く読みたくて仕方がなかったのに、今手紙が視界に入るまで存在すら忘れていたのだから驚きだ。
ソフィアへ
久しぶりだね。夏休みは元気に過ごしているかな?私の周りでは、毎日クィディッチ・ワールドカップの話ばかりだよ。
イングランドがトランシルバニアに390対10で負けたのは、なんとも嘆かわしいニュースだったね。
唯一の希望、アイルランド対ブルガリア戦によければ招待するよ。魔法省が席を用意してくれたんだ。どうやら、彼らなりの”細やかな"贖罪らしい。
お友達もどうぞとチケットを2枚譲ってくれてね――この12年間で私には当てが殆どなくなってしまったんだが……謝罪ではなく、皮肉の意図があったのかもしれない。
君は私の友人で、しかも私を餓死の危機から救い、さらには冤罪から救ってくれた返しきれない恩がある。鋭い君なら察しているかもしれないが、ぜひ招待させてほしい。
二束三クヌートのチケットだから、これで恩返しになるとは思わないが、私の自己満足に付き合ってくれ。君が行きたがっていて、チケットを持っていないことはすでに君のご両親から調査済みだよ。
よければクィディッチに行くまでの期間、ロンドンにある私の実家にも招待するよ。古い本が多いから、もしかしたら君が森で聞きたかったことの助けになる情報もあるかもしれない。
返事は、ドウェインとクレアに伝えてくれ。すぐにでも迎えに行こう。
君の忠実な友、オツォより
「やった!!」
まるで、今日フェリックス・フェリシスを飲んだみたい。全てがうまく行くような思いにさせてくれる招待状を持ったまま、堪らず ソフィアは飛び跳ねた。
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