immature love | ナノ


▼ 夢の破片4

 廊下からダイニングへと入れば、シチューの豊かなクリームの香りが部屋中に広がっている。ドウェインはカラトリーを丁寧に手で並べていたが、クレアとアスターが入ってくるのを見るや、杖を振ってシチューを深皿によそうまで全て済ませてしまった。

「ソフィア、早く席について。今日は君にサプライズがあるんだから」

「サプライズなら、もうママに貰っちゃたわ」

 ポケットに入れた手紙を出して見せれば、ドウェインは少し驚いたように目を丸めた後に「そうかそうか」と大きく頷いた。

「食事にしようか。折角の家族全員揃っての食事だからね」

「今日はね、シチューはドウェインが作ってくれたのよ。私はケーキ係」

「ケーキまで焼いたの? 何かのお祝い?」

 驚くソフィアにクレアとドウェインが顔を見合わせた。

「何って、君の誕生日祝いだよ。いつも、学期中にあるから、夏休み中にお祝いしていただろう?」

「いつも、夏休みの最後だわ」

「その理由は、後で手紙を読めばわかるわ」

 クレアがいたずらっ子のように微笑んだ。

「それに、 ソフィア は今年はクリスマス休暇もホグワーツに残るだろうね。やっぱり今日やらなくちゃ」

 ドウェインも、さらに疑問符を頭に浮かべた ソフィアを見て、楽しんでいるようにしか見えない。面白そうに、楽しそうに顔を見合わせて笑う両親に、除け者にされているように感じて ソフィア は頬を膨らませた。

「今年はホグワーツに戻りたいよ」

 ドウェインが意味深げに言った。

「なんで?」

「ふふっ今に分かるわ。でも、 ソフィア、めいいっぱい楽しむのもいいけど、くれぐれも安全第一でね:

「だから、なんでなの?」

  ソフィアが声を大きくしても、2人は何も教えてくれない。職業故か口が固い両親が、こうも秘密を臭わせるのも珍しい。悪いことではないのだろうなと、諦めてシチューに集中した。

 シチューでお腹が満たされたはずなのに、オーブンから漂う香ばしいケーキの匂いに ソフィアは再びお腹が減ってきたような気がした。クレアはナプキンで口元を拭い、フォークから杖に持ち替えるとビュンと振った。

 オーブンからケーキが勢いよく飛び出し、ナイフで切られていく。シフォンケーキのようだ。冷水で冷やされていたボウルからブルーベリーが入った生クリームがケーキにかけられる。

「じゃあ、 ソフィア。一足早いプレゼントだ。どうしても、今回は直接渡したくて」

 ドウェインは小さな小瓶を ソフィアに渡した。ガラスの中では、太陽を溶かしたような金色で、表面はぴちゃぴちゃと楽しげに跳ねている。一度だけ、スネイプが授業で見せてくれたことがあったので、この薬が何か一目でわかった。

 フェリックス・フェリシス。人に幸運をもたらす薬。幸運の液体だ――。


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