immature love | ナノ


▼ 夢の破片3


 親愛なるセド

 手紙をありがとう。喜んで貰えて嬉しいわ。普段使わない頭を使った甲斐があったわね。

 今年のクィディッチの試合も、応援は私に任せてちょうだい! それに、私プレゼントの箒磨きセットを使ってる上に、プロの試合を見てあなたも更にレベルアップしてるでしょうし、応援にますます力が入るわ!

 プロといっても、クィデッチワールドカップだもの! 本当に信じられない! こんなに競争率の高いチケットを入手するなんて凄いわ!

 私も両親に頼んでみたけど、残念ながらチケットは手に入らなかったわ。勿論、私のことなんて気にしないで楽しんできてちょうだい!

 ビクトールクラム人形さえお土産に買っておいてくれれば、私からの文句なんて一つもないわ。

 愛を込めて。ソフィア


 ソフィアは今書き終えたばかりの手紙を丁寧に折りたたんだ。涙で滲んだり、文字が歪んでしまったりで、何度も書き直す羽目になってしまったが、ようやく出来上がったものだ。

 我ながら、自然な内容で書けていると思う。ペン先を滑らせる間は、何か変わったことはないか、元気なのかと聞きたくなる欲求をねじ伏せる必要があった。

 この夢を誰かに相談しなくてはいけない。ソフィアの予知能力を知っているのは両親だが、ただでさえクィディッチワールドカップに忙しい2人の悩みを増やすのは憚られた。

「ソフィア、夜ご飯できたわよ」

 どうしたものかと悩んでいたところで、控えめなノック。返事をすれば、柔らかな栗色の髪の毛を揺らしてクレアが顔を出した。

「今行くね、ママ」

 ソフィアは机の整理をしながら、返事をした。立ち上がりながら、机の上に散らばった手紙の出来損ないたちを足元の屑籠に放る。屑籠の近くで寝ていたグリーンイグアナのレクシーは、振動で慌てて起き上がっていた。

 立ち上がって、ガウンを羽織った。開いた窓からそよ風が入り、インクの匂いに混じって庭の薔薇の豊満な香りを訴えかけてくる。

 ガニメドが音もなく窓枠に止まり、足を恭しく差し出した。手紙を送り届けてくれるようだ。書き終えたばかりのセドリックへの返事を括り付けた。

 階段を降りると、クレアが笑顔を浮かべながら廊下に顔を出す。ソフィアもつられて笑顔になった。

「それに、デザート以外にとっておきのものも用意したの」

「とっておき? なあに、それ?」

 ウインクしたクレアは、ソフィアに手紙を差し出した。シンプルな封筒は、差出人を見ればシリウス・ブラックと書いてある。

「後で読むのよ」

 今はダメと念押しするクレアは、まるでクリスマスプレゼントを開けるかのように期待に瞳を輝かせる。クレアはシリウスと親しかっただろうかと疑問符を浮かべながら、手紙をデニムのポケットに捩じ込んだ。

「今すぐ読みたいところだけど……この香りは、シチュー? 手紙も楽しみだけど、お腹が空いちゃった」

 あの夢が予知夢なのか、単なる夢なのかは分からない。それでも、今すぐ起きることではないのだから頭を悩ますのはご飯を食べた後からでも遅くない。ソフィアは心を切り替えるように自分に言い聞かせた。


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