▼ 犬の恩返し2
あれから、日常はあわただしく過ぎた。まず、ペティグリューが逃げた。魔法省が能無しすぎて、マーリンの髭!
しかし、本当に驚くべきことに、スネイプがペティグリューが真犯人であると証言したことと、実際にペティグリューの生存をファッジやダンブルドアが目撃したことで、シリウスの無実が証明された。
だが、スネイプの証言には犠牲がつきものだった。復讐せずにはいられなかったのか、スリザリン生全員にルーピンが狼男に変身して校庭を徘徊していたと説明して退職に追い込んだ。
――貴様! 恥を知れ!
――おや、我輩の証言のおかげで吸魂鬼のキスを免れたのはどなたですかな? 恩人位向かってその態度、恥を知るべきはどちらか――猿でもわかるだろうに、学生時代から変わらず可哀想な頭をしている……。
ルーピンの正体を公にしたと分かった時のシリウスの激昂ぶりと、狂気を孕んだ目つきをしたスネイプのやりとりは、 ソフィア はいまだに一言一句違わずに思い出せる。
真夏の日差しを浴びながら、 ソフィア はセドリックと校庭をぶらぶらと散歩していた。
「それにしても、セド。なんであなた逆転時計のことを3年間も黙ってたの?」
「下手したら未来どころか現実を変えかねない魔法道具だから、先生に絶対に誰にも言ってはダメだって約束していたんだ」
ソフィア は、その言葉にそっかとだけ返した。というのも、ある考えに胸が弾んでいたから。
だって、今回の逆転時計を使ったおかげで、未来が変わっていた。
数百の吸魂鬼が襲ってきたときにシリウスはその場でキスをされかねない状態だったところを、ハリーが過去に戻ってシリウスや過去のハリーを守ることで未来を変えた。
スネイプの証言だけでは魔法省が信じない可能性があったところを、セドリックがペティグリューを捕まえて、突き出すことでシリウスの無実を証明して未来を変えた。(逆転時計を使うにあたって、過去の人に見られてはいけないらしいのだが、どうやってペティグリューを引き渡したのかセドリックは秘密の一点張りで教えてくれなかった)
「どうしたの?」
セドリックが ソフィア の顔を覗き込んだ。
「違うの――ただ、変えられない未来ってないって思ったの」
ソフィア の言葉にセドリックは不思議そうな顔をしたが、にっこりと笑みを浮かべて頷いた。
「決められた未来しかないんだったら、誰も頑張れないよ。 ソフィア の言う通り、変えられない未来なんてないと僕も思うよ」
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