immature love | ナノ


▼ シリウス・ブラック9

 ペティグリューは必死にブラックを悪者に仕立てようとしていたが、この場にはもはやペティグリューを無条件に信じる者はいなかった。セドリックがそっと ソフィア の前に立って、ペティグリューとの間に入ってくる。彼も、ペティグリューが殺人事件の犯人だと思っているようだ。

 ペティグリューの言い分を一つ一つ手折っていくブラックとルーピンの話を聞いていけば、全員がペティグリューに冷たい目を向けていた。誰も彼を信じていない、そしてこの場の誰もがブラックの言い分を信じていた。

 ペティグリューは、ブラックとルーピンに殺すと言われ、みっともなくロンやハーマイオニー、あまつさえハリーにまで命乞いをした。成人した魔法使いがたった13歳の少年少女に命乞いをしている! それも、1人は自分の裏切りで両親を亡くしてしまった子に! なりふり構わない保身が引き起こしたひどくみじめな光景だった。

 ブラックとルーピンがペティグリューに杖を向けた。

「さらばだ」

 これから殺害を起こすとは思えないほど、先ほどの激昂した言い合いが嘘みたいなほど、静かな別れの言葉だった。

「やめて! 殺してはダメだ!」

 ハリーが叫んだ。ハリーは駆け出して、ペティグリューの前に立ちふさがり、杖の前に立った。ハリーは「殺しちゃダメだ」と息も絶え絶えに繰り返した。ブラックもルーピンも、ハリーにショックを受けたようだった。

「こいつを城まで連れて行こう。僕たちの手で吸魂鬼に引き渡すんだ。殺すことだけはやめて」

 ハリーにペティグリューは感極まったといった様子で膝に抱きついてお礼を言ったが、ハリーは汚らわしいとばかりにその手をはねつけた。

「おまえのために止めたんじゃない。僕の父さんは、親友が――おまえみたいなもののために――殺人者になるのを望まないと思っただけだ」

「……それに、ペティグリューを引き渡せば、ブラックさんの無実が証明できるわ」

 ソフィア は遠慮がちに付け足すように言った。この人がペティグリューのせいで隠れるような生活を強いられていることが許せなかった。

「未成年の魔法使いと、指名手配犯と狼男だけの証言じゃ魔法省は聞いてくれないかもしれないわ――あー、ブラックさん、先生、悪気はないんです、すみません――ペティグリューを突きつけなきゃ。だって、自分たちが12年間も無実の人をアズガバンに入れていたことを積極的に認めたがるはずがないわ」

  ソフィア の台詞にルーピンとブラックは驚いたように ソフィア を見つめた。ハリー達もそうだ。 ソフィア がそこまで考えているとは思わなかったのだろう。

「分かった。いいだろう。ピーターがもし変身したら、やはり殺す。いいね?」

 ハリーも ソフィア も、ブラックの声に頷いた。


prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -