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▼ シリウス・ブラック5

 相手は杖を持っていて、ハリーは丸腰だった。それに、身長も横幅もシリウスに到底及ばない13歳の少年だ。ハリーの愚かな突進に衝撃を受けたのは ソフィア だけではなかったらしい。ブラックもショックだったのか、ブラックは杖を上げ遅れた。ハリーはブラックに飛びかかると、二人は仰向けに倒れ壁にぶつかった。

 とっさに動けたのは勝率とか生存率を考えてしまうようなセドリックや ソフィア ではなく、彼の親友たちだった。10人以上のマグルを殺した殺人鬼に、ハーマイオニーが蹴りを入れ、ロンが体当たりをした。

 一拍遅れて動き出した ソフィア よりも先に、クルックシャンクスが乱闘に加わった。「ウワーッ!」ハリーの悲鳴じみた驚いた声が聞こえる。クルックシャンクスはハリーの杖に飛びついた。ハリーが猫から杖を奪い返し、ブラックに突進しそうなところを ソフィア が体当たりをして止めた。

  ソフィア とハリーが地面に一緒に倒れこむ。「 ソフィア ! なんで邪魔するんだ!」「魔法使いがなんで肉弾戦しようとするの!」耳元で聞こえるハリーの叫び声に、 ソフィア は大声で怒鳴り返してやった。

 セドリックが乱闘のすきに杖を奪い返せたので、 ソフィア はそのままハリーを引きずってセドリックの背後に隠れた。ブラックはハリーの命を狙っているのだから、彼の前にハリーを送り出すような真似はできない。

 ブラックは ソフィア やロン、ハーマイオニーの杖を持ったままだった。もし、彼が―― オツォが ソフィア と出会ったばかりの時のように痩せこけていたら肉弾戦でも勝算があったかもしれない。

 しかし、せっせと毎日のように ソフィア とセドリックが肉を与えに足を運んでしまった。彼は細身ではあるが痩せこけてはいない。成人男性の体型だった。ハリーが突進して倒せるとは到底思えない。ハーマイオニーもロンもぼろぼろで、ハリーが ソフィア に押さえ込まれているとわかると慌てたように体を引きずりながらセドリックの後ろに回った。

 部屋は荒い息遣いのみが聞こえ、しんとしていた。そして、新しい物音が聞こえてきた。足跡だ。誰かが階下で動いている。

「ここよ! 私たち、上にいるわ――シリウス・ブラックよ――早く!」

 ハーマイオニーが急に叫んだ。ブラックは驚いて杖を振り上げ呪文を放ったがセドリックが妨害魔法をかけて弾いた。足跡は階段をバタバタと上がってきて、勢いよく扉が開いた。――ルーピン先生だ!

 ルーピンの目が、床に横たわるロン、すくみあがっているハーマイオニー、ヘッドロックしている ソフィア とされているハリー、杖を構えているセドリックと最後に杖を構えたままルーピン先生を見て固まっているブラックへと移った。

 ルーピンの登場に、セドリックも ソフィア も力が抜けた。実力のある大人が駆けつけてくれた。その事実はどうしようもない安心感がある。

「エクスペリアームス!」

  ソフィア たちの安堵を裏切り、ルーピンの呪文はセドリックとハリーから杖を奪い取った。激昂しているハリーはまだしも(むしろ、 ソフィア でも真っ先に杖を奪いとっていただろう)、なぜセドリックから――? 彼は、この場で冷静に動いていた。

 セドリックも戸惑ったような表情だったが、先生なら何か考えがあるのだろうかと悩ましげな表情で黙ってルーピンを見ていた。この場で杖を持っているに信用しないと先生に思われているとセドリックは考えたのかもしれない。

「シリウス、あいつはどこだ?」

 なぜ彼は、 ソフィア たち4人の杖を取り上げ、杖を構えて入るもののブラックには攻撃しないのか。なぜブラックを親しげにファーストネームで呼ぶのだろうか。


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