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▼ シリウス・ブラック3

「僕が先頭を、そのあとに、ハーマイオニー、ハリー ソフィア の順番で行こう」

「先頭をお願いしたいのは山々だけど、この狭い洞窟じゃ順番を入れ替えたりなんてできないわ」

 セドリックが厳しい顔をして言ったが、それを顔だけ振り向いた状態で ソフィア はセドリックに返事をしながら前へ進んだ。セドリックは渋々と言った様子で「何かあったらすぐに叫ぶんだよ」と心配を乗せた声音で言った。

 上り坂を終え、ねじ曲がった道を進む。先を行くクルックシャンク巣は次節振り返っては、 ソフィア たちがきちんとついてきているのか確認しているようだった。途中から問題なく4人がついてくると判断したのか、スタスタとクルックシャンクスは進んでいきその影は小さくなった。

 小さな穴から光が漏れ、だんだんと大きくなる。その光の正体は、部屋から漏れ出るあかりだった。雑然とした埃っぽい部屋にこのトンネルは繋がっていたようだ。

 壁紙は一部剥がれ、床はしみだらけで一部の床板は虫食い状態だった。家具という家具は、すべて壊れていた。窓にも板が打ち付けられていて。 ソフィア は実際に見たことはなかったが廃墟を中から見たらこうなるのだろうと漠然と思った。(ホグワーツもマグルから見れば外観は廃墟らしいが、実際は廃墟ではないので廃墟に入るのはこれが初めてだった)

 部屋の中には誰もいない。しかし、右側の扉が開きっぱなしになっていて、ホールへと続いていた。この部屋然り、ホール然り、どこも薄暗い雰囲気だった。

「ここ、『叫びの屋敷』の中だわ」

 ハーマイオニーが囁いた。ボロボロになった家具ばかりで、この部屋の凄惨さを見れば、叫びの屋敷にゴーストがいると言われても仕方がないと ソフィア は思った。もし本当にゴーストが住んでいるなら、ここで何か恐ろしい殺人事件でもあったに違いない。

 頭上で床板が軋む音がした。上の階で何か動いたのだ。オツォとロンがいるのかもしれないが、それにしては人の声がしない。 ソフィア とセドリックは頭上の天井を見上げ、彼は真剣な表情をして天井を見た後、 ソフィア に目配せしてホールを指差した。 ソフィア も頷いて杖を取り出す。

 途中から捨てていた説だが、オツォに飼い主がいたのかもしれない。飼い主の命令でオツォがロンを狙ったのならば、少し不思議だった。彼の家は貧乏だから誘拐しても身代金なんて期待できないし、純血ではあるが何か特別な要素があるわけでもない(例えば、ホグワーツの創設者の子孫だったり)狙われる理由がないのだ。

 もしかしたら、ハリーを狙った犯行だったのか、ハリーを誘き出すためにロンを攫ったのかもしれない。セドリックの厳しい表情も、最初に順番を伝えるときにハリーを後ろに挙げたのもハリーを狙った可能性を危惧しているのだ。

 音を立てないように、4人は隣の薄暗いホールに忍び込み、崩れ落ちそうな階段をこっそりと上がった。手すりも家具も、どこもかしこも厚い埃をかぶっていたが、床だけは何かが引きずり上げられた跡が、幅広い縞模様になって光っていた。跡を追いかけるように踊り場まで上がった。

「ノックス!」

 杖先の灯りが消え、開いていたドアから唯一光が漏れていた。ドアの向こうから物音が聞こえる。低いうめき声――ロンの声だ――、それと、太い、大きなゴロゴロという動物の声だった。

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