immature love | ナノ


▼ シリウス・ブラック2

 森の近く、いつもオツォが尻尾を振って ソフィア たちを待っていてくれる場所に生き物の気配はない。どうしたんだろうとセドリックと顔を見合わせた時、男子の悲鳴じみた叫び声が聞こえた。

 固まったのもつかの間、先に走り出したセドリックにつられて ソフィア も走り出す。杖をジーンズのポケットから取り出すのも忘れなかった。叫び声がした方角は暴れ柳がある。いつも以上に暴れているようにさえ見える暴れ柳に、誰かが張り手でも食らったのだろうか。

 夕闇は絵の具で染めたように辺りを暗く染めている。 ソフィア は「ルーモス・マキシマム」と唱えて先を走るセドリックを追った。暴れ柳の近くに、ハリーとハーマイオニーがいた。

 ハリーたちは ソフィア がやってきたことにも気づく様子もなく、必死の形相で暴れ柳へ近づこうとしていた。思わぬ自殺じみた行動に ソフィア がつられて暴れ柳に目を向ければ、その根本にオツォと論がいた。

 激しく抵抗するロンに噛みつき無理やり根元の洞のような場所へ引きずりこむ大きな犬が、あの森で ソフィア を助けてくれた、いつも利口で優しいあの黒い犬とは信じたくなかった。

「オツォ!」

  ソフィア の声に、オツォはこちらを見ることもなく、夢中になってロンを引きずっていく。セドリックがそれをとめようと杖を振ろうとしたが、暴れ柳の枝がセドリックを潰さんと叩きつけられたのでそちらに気を取られている間にロンの姿が見えなくなってしまった。

「なんでオツォがロンを?!」

「とにかく今は追いかけないと!」

  ソフィア の悲鳴じみた声に、セドリックは杖を振りながら叫び返した。後ろにハリーとハーマイオニーをかばいつつ防御魔法で太い幹から守っている。ハリーもぼろぼろだったし、ハーマイオニーにいたっては血を流していた。彼らは一刻も早く医務室へ行くべきだし、彼らを背後にかばっているセドリックが動くのは難しい。

  ソフィア はグリフィンドール生みたいに勇気に満ち溢れた騎士道精神なんて持ち合わせていない。消去法でロンを助けに行くのは ソフィア しかいないだろう。それに、オツォを捕まえるミッションはこうなってしまっては必ず推敲しなくてはいけない。

「セド、一瞬でいいからこの幹を止めてちょうだい!」

  ソフィア は叫んだと同時にいくつかの、太い鞭のようにしなる枝にイモビラスをかける。アレスト・モメンタムは残念ながら ソフィア の腕前では今の状況で確実に使える自信がなかった。一方のセドリックは確実に後者の呪文で殺傷能力が高い幹の動きを止めてくれていた。

  ソフィア はいくらか動きが鈍くなった枝の間をすり抜けるように走り――俊敏な動きが得意ではない ソフィア は切り傷を顔やら腕やらにいくつか作りつつ――木の洞へスライディングで飛び込んだ。そのときに、勢い余って肘を木の節に強打したが、構ってはいられない。

  ソフィア はそのまま狭いトンネルで体制を整え、頭から地べたを這って進んだ。また、その直後になぜかクルックシャンクスが若干傾斜のついたトンネルを滑り降りてきた。 ソフィア の杖が放つ光に照らされ、目が不気味に光っている。それに続くように、ハリー、ハーマイオニー、セドリックまで追いかけてきたので ソフィア はぎょっと驚いた。

 セドリックが一緒にいてくれるのはありがたいが、明らかに怪我をしてあちこちから血を流している3年生が来るべき状況ではない。城に戻って先生を呼んできてと言ってもハリーが頑なに首を振るばかりで、これは何を言っても無駄だと ソフィア は思った。


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