immature love | ナノ


▼ 森の噂1

 知らぬまに、一月が過ぎ、二月になっていた。今年のバレンタインも毎年貰っている名も知らない人からバラとオルゴール付きのメッセージカードが届いた。オルゴールが鳴りだすメッセージカードに、そういえば今年も一昨年もセドリックからのクリスマスカードは音楽が流れていたと ソフィア は考えたが、正解の分からないクイズに頭を悩ませる暇は殆どなかった。

 なにせO.W.Lが徐々に近づいてきて、先生までぴりぴりしているのだから! スネイプなんて、「こんな簡単な縮み藥を作れもしない諸君とは――我輩としては実に喜ばしいことだが、今年限りでお別れでしょうな」と意地悪なコウモリのような目をギラギラと光らせて言っていた。彼はO.W.Lに向けて生徒の尻を叩くというより、これでオサラバだと高揚しているだけの可能性も高い。

 気が立っているのは先生だけではない、もちろん生徒もだ。ソフィアたちは同学年とさらにその上の上級生まで躍起になって教科書をめくり、羽ペンを癇癪を起こしては投げ捨て、図書館の席取り合戦は毎日のように勃発していた。夜になれば舞台を変えて談話室の席取り合戦だ。

 セドリックはあの頭のおかしい時間割をこなしているのに、今年はクィディッチのキャプテンとして、監督生としての夜の見回りといった業務までおまけでついている。さすがのセドリックでさえ疲弊していて、この前なんとギリアンが終わったレポートを彼は手すらつけていなかった――提出日は明日なのに!

 そんなストレスと胃痛との戦いのような日を寮関係なしに一定の学年以上の全生徒は送っていても、クィディッチは別だった。レイブンクロー対グリフィンドールの日、大広間にいけばグリフィンドール以外も興奮でざわめいていた。

 いくらクィディッチ日和にしたって、こんなにも浮き足立つものか。不思議に思った ソフィアに、ジョージが手を振った。隣に立つフレッドと目があい、どちらからともなく曖昧な笑みを浮かべた。やはり気まずさを感じる。

「 ソフィア! 見てみろよ、ファイアボルトだ!」

 グリフィンドール生の手厚い護衛を受けているそれは、テーブルの真ん中に、銘の刻印をされているほうを丁寧に上に向けた状態で鎮座していた。ファイアボルトだ。

「すごい! ハリー、あなたの箒なの?」

「あー、うん、まあね」

 ハリーは嬉しそうに笑いながら、肩を竦めた。ニンバス2000の代わりには十分かな、なんて小生意気なことを言うハリーの鼻をつまんでやれば、やめてよと非難の声を上げた。

  ソフィアがしげしげと箒を眺めていると、セドリックもやってきた。彼はずっとハリーが自分との試合であんな終わり方をしたことを気に病んでいたのだから、来て当然だろう。ライバルが史上最高の箒を手に入れたというのに、セドリックは我が事のように嬉しそうだ。

「おめでとう、すばらしい箒を手に入れたね」

「ありがとう、セドリック」

 セドリックはハリーのお礼に、「頑張って、アー……それじゃあ」と笑みを浮かべて手を振るとそそくさとハッフルパフのテーブルへ戻ってしまった。そんな様子を ソフィア は目を丸くして見送った。ずっと一緒にいると忘れがちだが、(どちらかといえばお喋りな方といってもいいくらいなんだから!)、セドリックはクールな男の子としてもっぱらの評判だった。

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