immature love | ナノ


▼ リセット2

 お互いが納得した上で別れたからといって、全てが元どおりになるわけではない。 ソフィアはそれを十分に分かっていたつもりだったが、実際にフレッドとの間に開いた距離は以前のただの幼馴染の時より遠いものになっていることに、多少の寂しさを感じた。

 近頃は ソフィアはグリフィンドール生だったのではないかと思えるくらいべったりと引っ付いて過ごしていたのだから尚更!

 自分が望んだ結果なのだから、 ソフィアには寂しさを感じる資格もないだろう。寂しさを紛らわすように、シニストラが出したこれまた長くて面倒な「木星の月の群れ」のレポートに取り組んだ。

 いくら天文学の面倒で厄介なレポートのどん詰まり具合と、暖炉の火花がパチパチと爆ぜる小さな音と暖かさ、ゆらめく橙が作り出す睡眠の誘惑には敵いそうにない。こんな時にセドリックかレティがいれば、このレポートもどんどん進むのだろうが。30分前から1行しか進んでいないレポートに ソフィアは泣きたいやら、このまま眠ってしまいたいやら複雑だ。

 うつらうつらとレポートと眠りの世界を行ったり来たりする。もはや行ったり来たりどころか、半分夢を見ているのかもしれない。今は談話室にいないギリアンの声が聞こえてきた。

 ――泣くなよ!

  確かにソフィア はレポートが終わりそうにないのでいっそ泣きたいくらいだったが、彼が談話室にいないのは間違い無いので――先日スネイプから食らった罰則で、今現在保健室のおまるを磨いている最中の筈なので――これは寝ぼけている ソフィア の脳みそが勝手に想像しているに違いない。ここで寝てしまえばレポートが締め切りに間に合わないと ソフィア の冷静な部分が警告しているのかもしれない。いないはずのギリアンは続けた。

 ――セドリックがいればなんて、どうしようもないこと言っても仕方ないだろ!

「 ソフィア? そのまま寝たら首を痛めるよ」

 肩を軽く揺すられ、 ソフィアは飛び跳ねるように勢いよく体を起こした。どうやら寝てしまっていたようだ。

「ん……ありがとう、もう少しレポートをやってから寝るわ」

  ソフィア を起こしてくれたのはセドリックだったらしい。隣の一人がけソファに座ったセドリックは、もともと置いてあった黄と灰色のストライプのクッションを抱えるように持った。珍しく羽ペンも教科書も持っていない。 ソフィアは礼を言って再び羊皮紙に向き直った。

「……大丈夫?」

 セドリックは気遣わしげな声音で言った。 ソフィアは羽ペンを脇に置いて、視線を羊皮紙からセドリックの方へと上へずらした。問うような視線を向ければ、セドリックは「レティから聞いたんだ」と答えを明かした。

「レティったらお喋りね! まあ、隠してたわけでもないから良いんだけど……私は大丈夫よ」

「ならよかった。無理はしないで」

「ありがとう」

 セドリックは微笑んで、クッションにシャープな顎を埋めた。いつもなら、フレッドとの距離感についてセドリックに相談していたかもしれない。彼に相談できないことななて ソフィアにはなかったのだから。

 しかし、セドリックへの気持ちを自覚してしまった今、とてもではないがそんな相談はできなかった。 ソフィアは態とらしく話題を変えようと天文学の教科書の分からなかった部分についてセドリックに聞けば、彼はそれ以上は追求して来ることはせずに、身を乗り出して教科書を覗き込んだ。



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