immature love | ナノ


▼ リセット1

 休暇が開けて、ホグワーツも賑わいを取り戻した。 ソフィアは向き合わなければいけない現実に、(自分が100パーセント悪いとは言え)めまいがしそうだった。

 ガニメド に持たせた手紙は、無事にフレッドの元に届いたらしい。フレッドは、指定した空き教室へとやってきた。

「 ソフィア、どうしたんだよ。こんな改まってさ」

「フレッド……別れましょう」

  ソフィアの中の、フレッドに恋している心がいやだいやだと泣き叫んだ。だが、これは ソフィアのわがままだ。 ソフィアが招いた事態である。だから、涙なんて絶対に浮かべてはいけない。泣く資格なんてないのだ。

「嫌だ」

 フレッドの答えは、静かだった。 ソフィアの目こそ見ていないが、地面を見つめて、嫌だともう一度繰り返した。

「別れたいなんてどうして思ったんだ? 束縛が嫌だったなら謝るし、やめるよう努力する。 ソフィアも無理してディゴリーと距離を置かないで、前みたいにしてても大丈夫だ」

 まくしたてるようなフレッドに、違うのと ソフィアが首を振ればフレッドは今度こそ視線を合わせた。悲しみと怒りを混ぜ込んだ色をしていた。

「それともやっぱりあいつと付き合う?」

 フレッドの言葉に ソフィア は首を振った。あいつとは誰を指しているのか、聞かなくてもわかる。セドリックのことだろう。フレッドは、今までずっと ソフィア以上に ソフィアのことを理解してくれていた。

 辛い時は欲しい言葉をかけてくれたし、 ソフィアの好きなものだってなんでも知っていた。だから、彼が ソフィアがセドリックに対して少なからず恋愛感情を抱いていることに気づかないはずがなかったのだ。

 罪悪感がまた大きく膨れ上がって、 ソフィアがフレッドと付き合っているうちにセドリックへの気持ちが消えれば、すべて解決するのではないかなんて考えが脳裏をよぎった。

 でも、それではダメなのだ。だって、 ソフィアはまさにそうしようとして失敗したのだから。

「フレッド、私が馬鹿なばっかりに一杯傷つけてごめんなさい」

「謝るくらいなら、さっきの言葉取り消してくれよ」

「私のわがままで一方的に別れを切り出して、本当にごめんなさい。でもね、今のままあなたと付き合うなんて、そんな不誠実なことには耐えられないの。本当にごめんなさい」

 あなたのことは変わらず好きとは言えなかった。別れを切り出す以上、 ソフィア からフレッドを繋ぎ止めるようなことを言ってはいけない。黙り込んだ ソフィア に、フレッドは「謝るなよ」とだけ言った。

 フレッドは ソフィアのことを誰よりも理解している。だから、ソフィアのセリフに思うところがあったのだろう。静かな瞳がソフィアを射抜いた。

「はぁ、分かったよ。昔から ソフィア は頑固だしな。それに…… 俺もずっと余裕ない態度で、悩ませたよな。ごめん」

 謝らないで欲しかった。なんでこんなにも、フレッドもセドリックも、非なんて全くないのに 謝ってくれるのだろう。 ソフィアは底抜けの優しさに涙が出てきそうだった。

「お前が振ったんだぜ? 泣かないで、笑うくらいはしてくれないとな」

 フレッドはいつもの悪戯な笑みを浮かべて、からかうように言った。傷ついているのはフレッドなのだ、彼の言う通りに泣くわけにはいかないと目にますます力を入れる。少し伏し目がちに何かを考えると、一歩踏み出して ソフィアの唇すれすれに触れるだけの優しい口付けを落とした。

「俺、多分きみのことがずっと好きだ。だって、物心つく前からそばにいて、嫌なところも良いところも知ってて、全部ひっくるめて好きなんだ。

  ディゴリーなんかに取られる前に、また一から落としにいくよ。元から長期戦だったんだ」

 それまではただの幼馴染で甘んじてあげようとフレッドは笑った。きっと ソフィアがセドリックへの気持ちに気づいたことも、悩んだことも、フレッドは分かっているのだろう。「不器用女のせいでやり直しだ」と態とらしく嫌味を言ったフレッドは、 ソフィアの頭をぽんぽん叩いて教室を出て行った。

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