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▼ クリスマス1

 休暇中のハッフルパフ寮は、 ソフィアとセドリックの貸切だった。 ソフィアはマダム・パディフットの店でお土産にと買ったクッキーを開け、食べかすをこぼしながら魔法史のレポート「ゴブリンとオークの間で起きた100年戦争の経緯と結果を述べよ」を羊皮紙2巻分書き終えたところだった。

 ところどころクッキーのせいで油分のシミがあるような気がするが、問題あるまい。おそらくスネイプかマクゴナガルあたりでは呼び出されていたかもしれないが( ソフィアの気にし過ぎかもしれないが、少なくとも前者はそれを理由に大鍋10個の魔法なしでの掃除を言いつけかねないと確信していた)

 数日経って、クリスマスの朝。 ソフィアは優しく響くオルゴールで目を覚ました。机に置かれた赤と白の可愛らしいクリスマスカードは音がなる仕様だったようだ。差出人を見ればやはりセドリックだ。

 カードの近くには、インクがなくならない白い布地に黒い犬が刺繍されたハンカチがあった。オツォだ。これも魔法がかけられているのだろう、刺繍の犬は楽しそうに白いハンカチ上を駆け回っている。以前、クィレルやマルタが教えてくれたマグルの世界で人気の”アニメ”のようだと ソフィアは思った。

 フレッドからの贈り物はブレスレットだった。青い細身の金属でできたそれは、光を受けるとキラキラと輝いた。クリスマスカードには「いたずらにはご用心!」と書かれていたので、慌てて外した。クリスマスカードに「メリークリスマス」以外の文言が書かれているのは初めて見た。

 慌てて取り外した瞬間、それはボフンと大きな音と白い煙を立てた。間一髪だ。危なかった。 ソフィアが冷や汗をかきながらそれを見ると、ブレスレットはそのまま、華奢な鎖でできた青みがかった緑色のブレスレットに変わっていた。メッセージカードの文言もいつの間にか「 ソフィア の瞳は、世界中の色の中で最も美しい!」に変化していた。

 随分と昔、義理の両親のふつうの青い瞳がよかったとボヤいたことを覚えていて、今回のプレゼントにしたのだろうか。 ソフィアはなんだかくすぐったくなって、くすくすと笑ってそのブレスレットをした。先日の3人の女子会の決意は固いが、それでも嬉しいと歓喜してしまう自分がいるのだから仕方ない。

 足元に山積みのプレゼントの開封作業に取り掛かる。ニットワンピースや、ウィーズリーおばさん特製のハッフルパフの黄色とグレーで編み込まれたセーター、クリスマスケーキ、小さな飛ぶ箒の模型、それから――なんだこの投げ縄は。 ソフィアは思わず目を細めて、差出人の名前と商品の説明用紙を手に取った。嗚呼やはり、アスター家からの恒例の変わったプレゼントだ。

 オートマティック投げ縄

 ノーコンなあなたも、力がないあなたも、この投げ縄さえあれば安心して魔法生物を捕まえられます。対象に向かって投げて「ロックオン!」と叫べばたちまち縄が自動で獲物を追いかけ捕獲。女性にも安心して使える安全設計。普段使用しない時は小さくしてポケットに入れておけるので持ち運びも簡単! ご使用の際は注意書きをよくお読みください。

 ―― ソフィアは途中で読むのをやめた。

 ガニメド を贈ってくれた時もだが、彼らは何をしたいのか。これでヒッポグリフでも捕まえろっていうの?と ソフィアは訝しげに目を細めた。


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