immature love | ナノ


▼ 親友3

 寮に帰ってくると、ギリアンがヒューヒュー飛行虫を打ち上げているところだった。そばに座るセドリックは笑ってそれを見ていたが、 ソフィアに気づくと席を立ってこちらへ歩いてくる。

「 ソフィア、よければ――」

「ごめんなさい! セドリック、その話急ぎかしら? 疲れてるからもう寝ようかと思ってて」

 セドリックの話をわざとらしい理由で遮り、 ソフィアはセドリックに謝罪を伝えてそのまま逃げるように寝室へ戻った。呆れた様子のレティとマルタが続いてくる。

 寝室へ入るなりベッドに突っ伏した ソフィアを気遣うように、レティは同じベッドに浅く腰掛け背中をゆっくり撫でた。

「あんなに仲良かったのに、どうしたのよ」

「セドリック、悲しそうだったよお。喧嘩したの?」

 レティの気遣わしげな優しい声音と、マルタのスペイン語訛りの間延びした英語に ソフィアは少し元気が出た。半回転し、仰向けになると逆さまにレティとマルタの顔が見える。

「フレッドは恋人として、セドリックは親友として同じくらい大好きだと思ってたの。セドリックのことは友達としか思ってなかったから、今まではフレッドと付き合っても変わらず仲良くできたけど、私もしかしたら――」

「セドリックへの”好き”が恋愛感情混じりだったってわけね。私から言わせれば、今更気づいたの?って言ってやりたいけど」

 目をぐるりと回してレティが笑った。痛く無い程度に、軽い力で背中をバンと叩かれる。「ギリアンだって気づいてるのに、鈍すぎるわよ。バカチン」という小言も付け加えられた。

「ホグワーツでも有名どころの二人なんて、 ソフィアも欲張りさんだねえ」

 一方のマルタは、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべて ソフィアの顔を覗き込んだ。

「確かにどっちもクィディッチ選手ね、方向性は違えど女子人気もあるし。こうなったら、ロジャー・デイビースもいったらどう?」

 いつもなら、ロジャーはもう他の女に取られちゃってたわと軽口でも返したいところだが、先ほど罪悪感で死にそうだった ソフィアは目を丸くするしかできない。罵詈雑言を予期していたが、実際はとても軽い反応だ。 ソフィアにしてみれば、アズガバン行きが確定するに違いない許されざる呪文を使ったことを自白するような覚悟だったというのに。

「軽蔑しないの?」

 おそるおそる確認するように ソフィアが質問すると、レティは最初の剣幕が信じられないほど朗らかに笑った。

「フレッドに比べれば積極性には欠けてたでしょうけど、セドリックにあんなに気にかけられてて落ちない子なんていないでしょ」

 レティは、私たちに相談もしないで一人で思い詰めてるから怒ってたのよとほほを膨らませる。

「気持ちはコントロールできないものだもん、仕方ないよお。本能のままに行動しない理性が、人間を人間たらしめるんだもん」

 間延びした口調に似合わず小難しいことを言うマルタに ソフィアが笑っていれば、「で、どっちにするの?」なんて小悪魔な女の子らしい質問が飛んで来た。どちらが言ったのかは3人だけの秘密だ。

「どっちも選べないわ、こんな気持ちのままじゃ不誠実だもの」

 親友の出した結論に、二人は「本当ハッフルパフらしいわね」と笑って彼女に抱きついた。1台のベットに、昔と違って体格も成人女性と変わらないくらい大きくなった3人が寝るのは少々――だいぶキツい。それでも、この狭さや居心地の悪さも、 ソフィアにとってかけがえのないものだった。


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