▼ 親友2
黒いマントと黄色のスカーフにすっぷりと身を包んだ ソフィアは、大理石の階段の下、玄関ホールのすぐ近くでフレッドを待っていた。グリフィンドール塔は遠いから、彼がマントを取って戻ってくるまで、もう少し待つことになるだろう。
外は雪がちらついていて、 ソフィアを抜かしてホグズミードへ向かう生徒たちもみんな厚着で着ぶくれている。じゃあねとセドリックたちは ソフィアに手を振って通り過ぎて行った。
ちょうど一年前、彼とクリスマスショッピングをしにホグズミードへ行ったことを思い出してしまい少しドギマギしながら、 ソフィアは手を振り返した。
「待った?」
フレッドが楽しそうにこちらを覗き込んで来た。彼は赤と黄色のマフラーをしていて、 ソフィアの耳元を触った。赤いピアスが輝いている、以前フレッドがクリスマスに彼女へ贈ったものだ。
「俺があげた耳あてじゃん」
「あなたのプレゼント、不良品よ。室内でもたまに耳あてになるし、外に出た時は1/2の確率でピアスのままなの」
「今日はなるといいな」
いたずらに笑ったフレッドは ソフィアが巻いていたスカーフを外すと、自身がつけていたマフラーを代わりに巻きつけた。
「本当は、前みたいにマフラーを巻いてあげたかったから、わざと不良品にしたんだ」
だから交換と言って笑うフレッドに ソフィアもつられて笑う。フレッドのイタズラを成功させたようなキラキラした笑みが ソフィアは大好きだった。
雪はいつの間にか吹雪になっていて、冷たい雪が吹き付けてくるのを堪えながら ソフィアとフレッドはホグズミードへ急いだ。
マダム・パディフットの店内は紙吹雪やピンク色の家具雑貨、お花の飾りつけなどファンシーだ。 ソフィアも思わず可愛いものに目を輝かせる。席は満席で、フレッドが予約を取ってくれていなければ外で待つ羽目になっていただろう。
フレッドは借りて来た猫のように大人しくなるかと思いきや、開き直ったように ソフィアの手をにぎって嬉しそうにニコニコと笑う。
「店に着いた途端ゲロを吐くかもしれないって不安だったんだぜ、でも君となら案外いいもんだ」
ソフィアの手の甲を繋いだまま指で撫でながら、フレッドは目元を赤くした。その様子が嬉しくて、笑えば、笑うなよと口をすぼめたフレッドにキスをされる。
流石に店内でと焦ったが周りは自分の世界に夢中のカップルばかりで、 ソフィアとフレッドがキスをしようが手をつなごうが、全く気づかれそうに無い。
「 ソフィアといるだけで、ジョージとリーとスネイプにクソ爆弾を投げつけた時くらい楽しい」
目尻を下げ愛を囁く彼は、少しこの雰囲気に酔っているのか。(酔ってなければやっていられないのも間違いない、近くのテーブルではレイブンクローのロジャー・デイビースが彼女へ濃厚なキスを贈っているくらいだ)
「私はフレッドと一緒にいるときが一番楽しいわよ? 他とは比較できないくらい」
「悪かったよ、スネイプなんて例に出して。そういえば、今年は冬休み残るんだろ? 俺も残ろうか、それか ソフィアもうちに来いよ」
「名案だけど、ブラックのせいでウィーズリーおばさんたちが心配してるわ、残らないで。それに、ハリーも残るって聞いたから大丈夫よ、寂しく無いわ」
ソフィアがウィーズリー家に行くのもよかったが、留守中のオツォの世話が心配だった。最近はいくらか健康らしくなってきたが出会った当初のガリガリぶりといったら! 心配だし、いっそ飼ってしまおうかと悩んでいるほどだ。実を言うとレティやセドリックにも家にくるか誘われていたが、お断りしたのもその理由からだ。
「彼氏よりハリー優先かよ。」
フレッドがわざとらしくため息をついたあと、繋いだ手にキスをする。胸の高鳴りがひどい。手はひどく冷たいのに、フレッドと手を繋いでるだけで火傷するように熱く感じる。間違いなく、 ソフィアはフレッドに恋している。大好きだった。でも、それと同時にセドリックも気にかけてしまっている。その事実に吐きそうだった。
セドリックをこのまま避けていれば、 この罪深い気持ちは消えるだろうか。
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