immature love | ナノ


▼ 零れ落ちゆくもの4

 叫ぶような呼びかけの声の主はフレッドだった。

「何もないか? 大丈夫か? 今すぐここを離れるぞ」

 いつにない必死な様子のフレッドに眉を顰め、どうしたのと聞く。セドリックもフレッドのただならぬ様子に困惑したような雰囲気だ。

「ブラックが君らといたじゃないか! ああ! 早く城に戻ろう……」

 フレッドは ソフィアの腕を引っ張り、半ば駆け足に城へと踵を返す。いつになく焦ったような怯えたような様子と、ブラックという単語に ソフィアは困惑しながらもついていった方がいいだろうと一緒に走った。

 引っ張られるように走りながら、振り返ると空っぽになったバスケットにクルックシャンクスを入れてセドリックも走ってついてきていた。正面玄関が見えてきて、大きな扉をくぐり抜けて少し安心したように息を吐き出したフレッドはそのまま近くの空き教室に入っていく。

「ウィーズリー、何があったんだ?」

「あの森で、君ら2人だけだったか? シリウス・ブラックはいなかった?」

「そうだね、僕らの他に犬とか猫はいたけど」

 セドリックの掲げたバスケットの中にいたクルックシャンクスは不機嫌そうに鳴くと、軽やかにバスケットの中から地面へとジャンプし降りたつ。途端に此方を一瞥することもなく走り去ってしまった。

「……今の子とかね」

  ソフィアは肩をすくめながらもう見えなくなった後ろ姿をつい視線で追った。

「いなかったなら良かった、俺の見間違いだったのかもしれないし」

 頭を振ったフレッドに、「見間違い? フレッドは何故私たちとブラックが一緒にいると思ったの?」と今更湧き上がる疑問をぶつければ、フレッドはちらりとセドリックを見る。

「セドリック、悪いけど先に大広間に行って貰っててもいい?」

「わかった、気にしないで」

  ソフィアの言葉に、セドリックも自分がいてはフレッドも話しにくいこともあるだろうと頷いて早々に立ち去る。セドリックが出て行く際に閉めた扉をみてから、振り返ってフレッドに向き直った。フレッドは懐から一枚の古びた羊皮紙を取り出していた。

 ホグワーツ城と学校の敷地全体を詳細に記した地図だった。地図上には小さな点があり、ひとつひとつの文字を見ようと顔を近づければそれぞれが誰かの名前を書いてあることがわかった。

 例えば、この教室から近いところから大広間へ向かって動く点にはセドリック・ディゴリーと名前が記されている。先ほど先に大広間へ行っているはずだ、恐らくこの地図はこの学校で誰がどこにいるのか分かる魔法アイテムなのだろう!

「これで君を見てたんだ、朝から外に出てるのが気になって。そしたら、シリウス・ブラックって書かれた点が君に勢いよくぶつかっていくものだから……」

 フレッドはため息をついて顔を地図を持たない片手で覆ってしまったので見えなかった。

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