immature love | ナノ


▼ 零れ落ちゆくもの2

早朝、 ソフィアが身支度をして女子寮から談話室に出るとセドリックがいた。トレーナーにスウェット、軽い運動できる格好で談話室の入り口から入ってくるところだった。

「お早う。随分と早起きね?」

「お早う ソフィア。ちょっとランニングしてきたんだ、今日は久しぶりに天気がいいから」

「体調は大丈夫なの?」

「むしろ調子いいくらいだよ」

 にっこりと笑ったセドリックは、ふざけたように右腕を持ち上げて力瘤を作って見せた。見せびらかさないでと ソフィアが怒ったふりをして腕を叩いて見せれば、セドリックは楽しそうにくすくす笑う。

 一頻りくすぐったそうな笑いをこぼしたセドリックは、ソフィアこそどうして早起きしたの?と首をかしげた。そんなセドリックにソフィアはにんまりと笑って見せる。

「森の方に行って、オツォにご飯をあげようと思って」

「じゃあ僕も一緒に行ってもいい? 久しぶりにオツォに会いたいな」

  ソフィアは笑顔で頷きセドリックを伴って談話室をでた。途中、厨房に寄り朝ごはんの用意で忙しない様子の屋敷しもべ妖精たちに申し訳なさも感じながら生肉を貰った。

 松明の並んだ地下を歩いていく。石造りの建物は堅牢で、古い建物のようではあるが不思議と隙間風も無い。最近の空気の凍てつくような寒さはむしろ、ハッフルパフ寮や地下室のある地下は和らいだ。

 ロビーへの階段を上ったところで、丁度誰かが外への扉を開けたのか強い風が吹き込み ソフィアは堪らずくしゃみをした。そんな ソフィアにセドリックは自身が来ていたトレーナーを脱いで渡した。

「セド、あなた昨日も風邪っぽかったのに。受け取れないわ」

 トレーナーを脱げばセドリックは長袖のシャツ一枚だった。最近は厚着で目立っていなかったが、クィディッチの練習か筋トレか、鍛えられた身体のラインが目立った。とはいえ、いくら筋肉で厚着をしようとしたところでこの突き刺すような朝の寒さには太刀打ちできまい。

 断りを入れてスウェットをつき返そうとする ソフィア にセドリックは遠慮しないでと首を振る一点張りだった。でも――と言い募ろうとした ソフィアの唇に人差し指を押し当てた。

「親友の顔を立てると思って、僕にも格好つけさせてよ。ね?」

「仕方ないわね、手のかかる親友だわ」

  ソフィアは肩をすくめると、カナリアイエローのグレーのハッフルパフカラーのそれをのそのそと頭から被った。裏起毛になっていて、着るだけでほっとする暖かさだ。先ほどまでセドリックが着ていたせいか、少し温い。

 私が着たのを確認したセドリックは、外へとつながる扉を押し開けた。瞬間、一際強い風が吹き込む。へくしっと随分と可愛らしいくしゃみが聞こえ、思わず目を向ければ――恥ずかしさからか寒さからかは分からない、恐らく両方だ――セドリックは顔を赤くした。

「格好つかないな」

 らしくなく眉を下げて恥ずかしそうにするセドリックに笑って、着たばかりのスウェットを脱ぐ。

「私を心配で震えさせたくなかったら大人しく着てちょうだい」

 さっきの格好よさはこれで帳消しねとウインクしながらスウェットを――
腕の長さがセドリックの頭に届かないにも関わらず――無理やり被せようとする ソフィアにセドリックは観念したようにしゃがみ込んで頭を差し出した。スウェットの中から聞こえるくぐもった笑いに、 ソフィアは分厚い布越しに頭を小突いてやった。

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