immature love | ナノ


▼ 恐怖と勝利5

「ハリー!」

 近くのベッド、カーテンで仕切られた向こうから安堵に満ちた声が上がった。それを聞いて、フレッドとジョージは「また来るからな」と告げて、忙しない様子で泥の筋を床に残しながらカーテンの向こうへ消えて行った。

「そうだ! ハリーは無事なの?」

「大丈夫だよ、ダンブルドアがすぐにピッチに出て呪文を唱えたんだ。大事には至ってない」

 幾らか明るさを取り戻したセドリックが微笑んだ。ギリアンが明るく笑いながら濡れた手で御構い無しに ソフィア の頭をかき回した。

「喜べ、マダムポンフリーは少なくとも君は2日、ポッターは3日間は入院すべきだって考えてる。この後いくらでもポッターを独り占めできるぞ。だから、ホットチョコ飲んで早く寝ろよ」

 すぐにでも立ち上がってハリーの様子を見に行こうとしていた ソフィアは、布団を口元まで引き上げてニヤリと笑った。なんだかんだ、ギリアンも口は悪いのに心配性だ。さすがハッフルパフといったところか。

「君が倒れたと聞いて、心臓が凍る思いだったよ」

 セドリックはまだ握ったままだった ソフィアの手に確かめるように力を込め、うな垂れた。

「ピッチでポッターが倒れて騒ぎになってたら、レティが泣きながら先生方の席に走っていくのが見えて……その後ろをギリアンとマルタが君を支えてて……君が電車で倒れた時も、今日も、秘密の部屋の時だって、僕は肝心な時に君の側にいれてない」

 セドリックが ソフィアの手を自分の額に付けながら吐露した告白は、まるで熱烈な愛の囁きのようで ソフィアは何て言えばいいのか分からず心臓がばくばくと音を立てる。キリリと太めの眉したから覗く灰色の瞳に、まるで吸い込まれるような錯覚さえ覚えた。

「ぺちゃくちゃ王子、それ位にしておけよ。無口のっぽはどこにいったんだ?」

 困った ソフィアを見かねたのか、セドリックの余りにも映画のキャラクターのような情熱的な口ぶりに呆れたのか、ギリアンがセドリックの背中を叩いた。

 セドリックは我に返ったように ソフィアの手を離し、「酷い言い方だね」と苦笑いした。

「皆さん、彼女が必要なのは休息ですよ! いい加減にしなさい!」

 校医のマダム・ポンフリーがやってきて、 ソフィアは安静にする必要があると主張してみんなを追い払った。突然 ソフィアの周りは静かになり、ハリーの周りが騒がしいだけに少しさみしいような気もしたが、 あのセドリックの瞳から解放されたことの安堵感の方が強く、安心したように息をついてもう一度ベッドに横になった。

prev / next

[ back to top ]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -