▼ 恐怖と勝利1
クィディッチの試合当日、天気はあいにくの雨だった。――雨という言葉で済ますことが憚られるくらいには、打ち付ける風も強く、ゴロゴロという雷鳴が頻繁に響き渡る。嵐でも、雷が落ちても、クィディッチが中止されはしない。
ホグワーツの壁を打つ強い風や禁じられた森の木々が軋む音が聞こえてくれば、外で吹く風が相当強いのだろうと簡単に検討がつく。今日のような強風の日は、ハリーよりもセドリックの方が有利かもしれないと、朝食のデザートにプディングを食べながらソフィアは思った。
5年生になるセドリックは昔のぽっちゃりした美少年からかけ離れた姿だ。がっしりとした体格に180センチ後半はあるだろう高い背、どちらかといえばビーターとかが向いてそうな体格ですらある。いつも隣にいるから忘れがちだが、随分と素晴らしい成長を遂げたものだ。隣の席にきたセドリックはソフィアに向かってにっこりと笑って下を指差した。何かあるのかと見れば、例の靴下だ。
「もう捕まえたの?」
「そうだね、靴下とお守りのおかげでもう2つもスニッチを持ってるんだ」
だからこれで300点と茶目っ気たっぷりに笑うセドリックにソフィアもつられて笑う。
「天気はあいにくだけど、大丈夫そう?」
「晴れた日に出来ればそれが1番だけど、相手も同じ状況だからね。文句はないよ」
肩をすくめながらセドリックは手を伸ばして、スーザンの席の前あたりに置かれていたトーストを1枚取った。おずおずと大皿をセドリックの方へ押しやったスーザンは、セドリックに有難うと微笑まれたため顔が沸騰している。
「ポッターはひょろっこいもんな、有利だって腹の中でほくそ笑んでるんだろ?」
ニヤニヤと笑いを浮かべたギリアンがセドリックを小突く。 ソフィア は少し眉間に皺を寄せたセドリックを励ますように肩をたたいた。
「大丈夫よ、あなたはどんなコンディションでもハリーに勝てるわ気合い入れていきましょ」
「ありがと、ソフィア。雪辱戦だからね、頑張るよ」
肩をすくめギリアンは口いっぱいにポテトサラダを入れたまま何か喋っていたが、聞き取れなかった。その上聞く気も無かったのだから、全員そのまま朝食を続ける。食べ終わったギリアンが不満そうにぼやくのを皆くすくすと笑った。外の嵐が信じられないほど、和やかな朝食だった。
セドリックがチームメンバーに声をかけられて席を立つ。それを見送りながら、 ソフィア達も急いで朝食を食べ終え席を確保するために立ち上がった。勿論、ローブに防水呪文をかけることも忘れずに。
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