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▼ ハロウィーンの夜3

 図書館で気もそぞろに勉強をしては窓の外を見る ソフィアに、フレッドはそれ見たことかと言いたげに目をぐるりと回した。確かに、ハロウィーン当日に勉強なんて捗りそうにない。一方で、セドリックやレティは真剣に本を読み漁っては羊皮紙に書き足していた。

「そろそろ大広間に行く? 宴会までもう少しだ」

 セドリックがにこりと微笑んだ。フレッドも賛成と言いたげに羽ペンを放り投げた。羽ペンが机の上を転がる音に、マダム・ピンスがちらりと何か言いたげに此方を見つめてくる。 ソフィアは幾らか声を落として賛成した。

 さっさと荷物をまとめて図書館を出る。ふくろうが控えた今年、マダム・ピンスに目をつけられるのは避けたかった。フレッドは片付けるほど勉強道具も広げていなかったが、セドリックの案に大賛成らしい。大喜びで荷物を鞄に乱雑につめている。

 一旦フレッドに別れを告げ寮に荷物を置きに行く。寮の近くであの犬を見かけることはなかった。きょろきょろと辺りを見回す ソフィアにセドリックはどうしたのか尋ねたが首を振った。誰かが違法でペットを持ち込んでいるかもしれないとセドリックが知ったら余計な心労になってしまうだろう。

 玄関ホールに戻り、そこを横切り、大きな扉をくぐり抜けて大広間へ入った。大広間には、何百ものくり抜きかぼちゃに蝋燭が灯り、毎年と同じように何百羽もの生きたコウモリが群れをなして飛んでいた。燃えるようなオレンジ色の吹き流しが、荒れ模様の曇天の空を写す天井の下で、何本もウミヘビのように泳いでいる。

 ダンブルドアの挨拶があった。今年は去年と違って骸骨舞踏団が来ないのが残念だったが、それを覆すくらい食事は素晴らしかった。お腹がはち切れそうになりながら ソフィアは全部の料理をおかわりした。宴会の締めくくりはホグワーツのゴーストによる余興だった。壁やらテーブルからポワンと現れて、編隊を組んで空中を滑走する様は素晴らしかった。

 満足感で胸が満ち足りている。 ソフィアはにこにこ笑って寮の談話室へ戻った。暖炉の前の肘掛け椅子に深く腰掛けて、靴を脱いで膝を抱え込む。炎がパチパチと音を立てている、それに耳を傾けながら膝の上に顎を乗せた。

「いる?」

 ソファにかかったブランケットを差し出してくれたセドリックに礼を言って受け取った。 ソフィアはブランケットを頭から被った。満腹感や暖炉近くの暖かさでだんだんと眠くなってくる。

 一部の上級生が今日のホグズミードで買ったらしいお菓子を机の上に広げて下級生たちに振舞っていた。それを横目に見ながら ソフィアが暖炉を見つめていると、入口からスプラウト先生が入って来たらしく生徒の驚いた声が聞こえる。

「落ち着いて、監督生たちは全員ここに呼んでください。詳しいことはその後話します」

 スプラウト先生の言葉に目が覚めた。 ソフィアは驚いたように目を見開いた。眠気も吹っ飛ぶ、今までこんなことは一度もなかった。セドリックも驚いているのか、びっくりしたように先生を見つめている。

 慌てて一緒に寝室の方へ行き、各部屋覗いて行く。申し訳ないが寝ていた下級生を起こして談話室へ行くように指示をした。一通り回って談話室に戻ると、スプラウト先生は部屋ごとに生徒を集めて全員いるか確認をとっている。

「皆さん、今から大広間へ移動します。今日はそこで就寝するようにというのがダンブルドア校長からの指示です」

「先生、何故ですか? 何か緊急事態なんでしょうか?」

 セドリックが声をあげた。それを見たスプラウト先生が落ち着いて聞いてくださいと前置きした上で続けた。

「シリウス・ブラックが校内に侵入したようです」

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