immature love | ナノ


▼ ハロウィーンの夜2

 朝食で頂戴したサンドイッチを齧りながら歩いている途中、廊下の角を曲がった時 ソフィアは驚きで腰が抜け、間抜けにも尻餅をついた。サンドイッチも落としてしまう。

 熊のように大きな黒い犬がいた。前に占い学で習ったグリムそっくりだったが、それにしては痩せこけていて迫力がない。

「大丈夫? これ食べても良いわよ……落ちたやつで良ければ」

 犬は一瞬伺うように ソフィアを見たが、無害とでも判断したのか尻尾を振ってサンドイッチに飛びついた。涎を多量に垂らしている。ソフィアは涎が自分に飛んでこないようにそっと横にずれながらしゃがんで手を伸ばした。

 犬は一瞬ピクリと体を強張らせたが、そのまま ソフィアに毛並みを触らせてくれた。油っぽくて、ベタベタしている。毛並みも滑らかとは言いがたく、なんとも表現しがたいザラザラ感があった。

「迷い犬? それとも誰かのペット?」

  ソフィアのペットとしてガニメド とレクシーが許可されているのだから、犬を特別に許可されている生徒だって他にいるかもしれない。誰かのペットだとしたら、ペットをこんな荒んだ状態まで放置するなんて許せないと ソフィアは憤りを感じた。

 お風呂に入れてあげてはどうだろうか。 ソフィアは考えたが、犬はじっとこちらを見つめている様子に気をそらした。

「ボクちゃん、もっと食べたいの?」

 犬はクーンと切なげに鳴いて ソフィアに寄り添った。そっと犬の顎の下を撫でてあげながら ソフィアはにっこりと微笑んだ。厨房に行けば生肉も手に入るかもしれない。以前、ドウェインの祖母の家に遊びに行った時飼っていた老犬が生肉を食べていた姿を思い出した。

 ついておいでと言って ソフィアが立ち上がると利口にも犬は尻尾を振りながら ソフィアの後をついてきた。「後でお風呂にも入りたい?」と聞くと、犬は怒ったようにワンと鳴いた。寮のお風呂は無理だが、監督生のお風呂だったら広い上に誰もいない。犬を洗うにはとっておきだと ソフィアは犬の様子を笑いながら考えた。

 シャワーがよほど嫌だったらしい。犬は ソフィアが厨房から出てきて肉を与えると、その場で食べることもなく口に咥えて走り去ってしまった。その様子に呆然としながら ソフィアはすぐ近くの寮へと入る。変身術のレポートに使う羊皮紙と羽ペンを取る必要があった。

 フレッドが来たらセドリックに迷惑がかかるかもしれない。嫌な予感に頭痛を覚えながら、 ソフィアは獣臭くなった手を洗い、荷物を鞄に詰め込んだ。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -