▼ ハロウィーンの夜1
第一回目のホグズミード行きはハロウィーン当日だった。だが、ソフィアも呑気にホグズミードに丸一日出かけるなんて出来そうにない。OWLが控えているからと毎回毎回教授たちは大量の課題を出してくるし、それと並行して今までの勉強を復習するなんて至難の技だった。 ソフィアは1日が28時間あればいいのにと心の底から思った。
朝食の席、 ソフィアはうんざりしたように目をぐるりと回した。隣に座るフレッドは不満げだ。眉をしかめ頬杖をついてそっぽを向いている。ジョージは困ったように肩をすくめた。
「 ソフィア、別に数時間くらいホグズミードに行ったっていいじゃないか」
ジョージが軽い調子で説得する。それに ソフィアは首を頑なに振った。
「今日は変身術のレポートを終わらせてしまいたいし、魔法薬学の予習もしておきたいの。無理よ……」
「ツマラナイ奴は放っておけよ、ジョージ」
フレッドが口を開いたと思ったらこれだ。 ソフィアはマナー違反だと知りつつも、がちゃんと音を立てて使っていたナイフとフォークを机の上に放った。
「私のボーイフレンドなら、私の意思を尊重してくれるはずでしょう! つまらない奴なんて言わないでちょうだい」
「それこそ ソフィア、君もディゴリーとの図書館デートより、ボーイフレンドとのデートを優先するだろ?」
「だから、デートなんかじゃないんだってば。何度も言ってるでしょう? レティ達も一緒だって」
ソフィアは目をぐるりと回した。別に、セドリックと ソフィアの間に何か特段変わったことなんておきていない。起きたとすれば、フレッドの心境だった。彼は明らかに初回のDADAの授業以来セドリックへの敵意を増幅させている。
「よお、フレッド。彼女は石になってないか?」
グリフィンドールを通りすがるレイブンクローの生徒――ロジャーだ――が揶揄うような口調で声をかけてきた。加えてこれだ。DADAの授業で、フレッドの世界で1番怖いものが ソフィアの石化した姿だったことがホグワーツ中で広まっている。これを事あるごとに色んな人から揶揄われるのだからフレッドはますます不機嫌だった。
「なら、俺も図書館に行くよ」
ソフィアの本心は、フレッドにはきて欲しくなかった。彼がくるとセドリックに対して一方的に敵意をむき出しにする。間に挟まれれば、非常に気まずい雰囲気になることは分かりきっている。
「私のために残らなくて良いわよ。ゾンコの店に臭い玉を補充しに行くんでしょう?」
「ソフィアと過ごす方が楽しいから。臭い玉はジョージが買うさ」
その様子にジョージがニヤニヤしながら言う。
「おい、フレッド。放っておいてもソフィアは石にならないぜ?」
フレッドは肩をすくめた。
「トロいソフィアなら自分にペトリフィカス・トタルスを掛けかけないだろ?」
「そんな心配は結構よ」
ソフィアは怒ったように顔を赤くすると、テーブルにあるサンドイッチを3つも掴み取って立ち上がった。
「御機嫌よう」
態とらしいくらい礼儀正しく挨拶した ソフィアは背後で聞こえるフレッドの笑い混じりの制止を無視して大広間を出た。
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