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▼ まね妖怪5

「中にはまね妖怪――ボガードが入ってるんだ」

 ルーピン先生が言った。入学して5年目、毎年変わるDADAの先生はとても優秀とは言えない人が多く――特に去年の先生は酷い有様だった――実地練習なんて初めてだ。論理を学んで、実際に呪文を扱うことはあっても、何かに対峙したことなんて一度もなかった。思わず身構えるが、ルーピン先生は朗らかだった。それが余計にプレッシャーだ。

「大丈夫、これは3年生レベルのものだよ。君たちなら難なく熟せると思う」

「ボガードについて何か知ってる人はいるかな? あー……君は、セドリックだったね?」

 手を挙げたセドリックをルーピンが指した。セドリックは3年生のある時からしょっちゅう手を挙げている。それに刺激される形でハッフルパフの生徒も多く手を挙げていた。

「形態模写妖怪です。僕たちにとって1番怖い存在に姿を変えます」

「その通りだ、ハッフルパフに5点あげよう」

 ルーピンがにっこりと笑った。そのままボガードについて説明していく。「リディクラス」という呪文を聞くのは今回が初めてだった。今までの5年間が空っぽのような気がして ソフィアは空恐ろしい気持ちになった。だって、ボガードの対処は3年生レベルなんだから!

「最初は誰かに手伝ってもらおうか……ジョージ、お願いできるかな?」

「俺はフレッドですよ」

 肩をすくめたフレッドが前に出た。すまないねと謝るルーピンだったが、仕方ないだろう。 ソフィアでさえ去年彼らを見間違えた。赤ん坊からの付き合いだと言うのに!

「フレッド、君が1番怖いものは何かな?」

「うーん、ブラッジャーかな……」

 フレッドがわざとらしく考え込むように呟いた。グリフィンドール生がどっと笑う。フレッドはブラッジャーを恐れるどころか、大好きなボールだろう。彼はビーターなんだから。

「すみません、多分、スフィンクスですかね。今年の夏にエジプトで見たやつ」

「フーム、僕が誘導しても良いんだけど、君はユーモアがあるから自分で決めたいかな? どんな姿になったら面白くなる?」

「それは、見てのお楽しみです」

 ニヤリとフレッドが笑った。目がキラキラしている。これは、誰かを笑わせたいとか誰かにいたずらしたいと思っている時の顔だ。自信ありげな顔に、ルーピンは笑って「それじゃあ任せるよ。いいかい? リディクラスだ。君達も、自分の番がきた時のために考えておいて」と言った。

  ソフィアは想いを巡らせた。1番怖いものはなんだろう。秘密の部屋にいたあの男の子、角を曲がった瞬間鏡ごしに目があったあの巨大な蛇、ヴォルデモートだろうか。もしかしたら、列車で遭遇した吸魂鬼かもしれない。

「みんな、いいかい? 1、2、3、それ!」

 ルーピンが扉を開けた。洋箪笥から現れたのはブラッジャーでもスフィンクスでもなかった。フレッドも驚愕したように目を見開く。 ソフィアもまた同じだった。まさか、自分がフレッドにとって世界一怖い存在だなんて想像もしていなかった。鏡を手に、目を見開いて横たわる、石化した ソフィアの姿だった。

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