▼ まね妖怪1
ソフィアは見逃したが、今年のDADAの先生は随分と優秀らしい。朝食の席で隣に座ったフレッドは前方の教職員席を指差した。かなりみすぼらしローブを着ている。それに、かなり若い。もしかしたら、 ソフィアの両親よりも若いかもしれない。
その若さは十分に歳をとってると言えるかもしれないが、ホグワーツの教職員のテーブルではかなり浮いていた。もしかしたら、スネイプといい勝負かもしれないが、スネイプの方が年上だ。消えない眉間のシワはスネイプを実際よりも老けて見せているように見えた。
鳶色の髪は間違いなく白髪混じりだとソフィアは思った。ドウェインでさえたまに白髪探しに鏡の前を陣取っているのだから、きっと――間違いなく――あるはずだ。目の下はクマがあり、全体的に青白い。疲れているどころか病人のように見える。
「あの人が優秀だっていうの?」
ソフィアは机の上に置かれたフレッドの左手の甲を撫でながら言った。フレッドは手のひらを裏返しにすると、 ソフィアと指を絡めて手を握った。肩をすくめる。
「 ソフィア、君の命の恩人だぜ。コンパートメントを通りかかった時にチョコレートをあげろって言ってくれたんだよ」
「そうだったのね! 偶然かと思ってたわ」
ルーピン先生は今度こそ闇の魔術に対抗する術を持っている先生らしい。 ソフィアはニコニコと楽しみに思いながら時間割を取り出し、自分の時間割を確認する。喜びでガッツポーズをした。月曜の午後1番の授業、まさに今日受けれるらしい。
フレッドが ソフィアの時間割を覗き込んだ。眉を上げて、おぉと態とらしい声を出す。何が言いたいのか問いかける視線を ソフィアが向ければ、フレッドは肩をすくめた。
「ただ、DADAと薬草学が一緒だと思ってさ。 ソフィアと選択授業は被ってないし、ハッフルパフとグリフィンドールが合同なのって珍しいよな」
「確かにそうね」
去年なんかは魔法生物飼育学はグリフィンドールとハッフルパフは合同だったらしいが、生憎と ソフィアは履修していない。 ソフィアだって命は惜しい。自分の運動神経やトロさと授業の危険度を見比べれば、酔っ払っててもこの決断をするだろう。
「ケルトバーン先生がいないわ」
ソフィアは思い出したように目を左から右へと滑らせ、テーブルを探すが怪我だらけのケルトバーン先生は見当たらない。彼の包帯だらけ――もしくはそれ以上にひどい怪我――の有様を見て ソフィアは魔法生物飼育学の履修を取りやめたのだ。ニフラーの世話くらいしかしないと思っていたが、そういう訳でもないのは火を見るよりも明らかだ。
ソフィアの疑問にフレッドは勿体ぶったようにニヤリと笑った。まるで ソフィアがこの授業を履修していないことを人生最大の誤ちだとでも言いたげに、両手を上にあげ肩をすくめる。
「なんと、今年から担当はハグリット”先生”なんだよ」
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