▼ 吸魂鬼2
車で駅まで送り届けてくれた両親は、すぐにその場をなはれなくてはいけなかったらしく車に乗って姿を消した。フレッドと一緒にカートを押していく。ハリーは恐ろしいくらいウィーズリーおじさんがぴたりと付き添っていた。やはり、彼が狙われているのかもしれない。
コンパートメントを見つけすぐさま荷物を置いてホームに降りる。ウィーズリーおばさんが子供達全員にキスをし、それから ソフィア 、ハーマイオニー、ハリーにもキスをした。それから全員にサンドイッチを渡した。 ソフィアのサンドイッチは卵サンドでフレッドのはピーナッツバターだった。
「いいですか、今年は大事な年なんだから。悪戯なんてしてないで、しっかり勉強するんですよ」
「私がモリーおばさんの分までフレッドもジョージも見張るわ」
「本当に頼もしいわね。でも、いい? 自分の勉強を第一優先でね」
ウィーズリーおばさんが今年私たちが控えるO.W.L試験について口酸っぱくまだ始まってもないので双子に説教をするので ソフィアは宥める必要があった。気がつけば出発の時間が迫っていて、おばさんに列車に急げとせき立てられた。
コンパートメントで向かいの席に座ったフレッドに「あなた、おばさんに言ったの?」と切り出せば、フレッドが降参だとでも言いたげに両手を挙げた。
「だから、別に俺はママにいちいち報告なんてしてないって。それに、とっくにバレてたじゃないか、そうだろ?」
どうせ兄弟全員に知られているのだからバレるのも時間の問題だと思っていた ソフィアだが、フレッドの様子が面白くてワザと「本当に?」なんて聞いてみせる。
「参ったな」
困り切ったように背もたれに深く腰掛けたフレッドにくすくす笑う。
「お詫びに、蛙チョコレートを後でちょうだい」
にっこり笑う ソフィアにフレッドがにやりと笑う。
「 ソフィア、買ってあげても食べれないんじゃないか? 捕まえられなくて」
「ちょうだいって言ったでしょ。買って、包みを剥がして、私のために捕まえて。だめ?」
「それでお姫様のご機嫌が直るなら」
フレッドがおもむろに立ち上がって ソフィアの隣へ座る。なんとなく、雰囲気がむず痒い。フレッドは隣に座ったが何をするわけでもなく、窓枠に肘をついてただじーっと ソフィアを見つめるだけだ。
「そんなに見ないでよ」
「そんなに寂しかった?」
にっこりと笑うフレッドは、そう言って空いている手を伸ばし ソフィアの髪をいじる。くるくると指に巻きつけては解き、巻きつける。フレッドの顔が嬉しそうで、ソフィアは顔をそらしたくなった。
「誰かさんが、私よりミイラに夢中なんだから、仕方ないでしょ」
横目に睨むが意味はないようで、フレッドはますます嬉しそうに笑みを深めた。頬杖をやめ、 ソフィアの方へ身を乗り出してくる。
「俺が君以外に夢中になるわけないだろ」
至近距離で見つめてくるフレッドが憎たらしくて、 ソフィアは衝動的にフレッドに軽く触れるだけのキスをした。驚かせようと思ったのに、フレッドは微かに眉を動かしただけで逃さないとばかりに手を髪に差し込んで ソフィアが後ろへ逃げようとするのを阻む。
ゆっくりと、湿った唇が離れていく。額同士をつけられ、至近距離で見つめられた。フレッドの耳がかすかに赤い。お互いはじめての恋人なのだから、映画のようには行かず、どうしてもむず痒い空気が流れる。
お互い何を言い出すか迷っている時にコンパートメントの扉がノックされる。慌てて扉を見れば、機内食のおばさんが笑って立っている。
「素通りしても良かったんだけど、あなた毎年大鍋ケーキ買ってるでしょう?」
青春ねぇなんてため息とともに呟くおばさんに今度こそフレッドは顔を髪色と同じくらい赤くさせ、仏頂面を引っさげたまま大鍋ケーキと蛙チョコレートを2つ買った。
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