▼ 吸魂鬼1
ソフィアは朝、パーシーの怒鳴り声で起こされた。驚いて辺りを見渡したが、当然誰もいない。何が起きたのか分からず廊下に出ると、ロンとパーシーが喧嘩していた。
「お前のせいで彼女が顔を隠しちゃったじゃないか!」
「僕は零してないって言ってるだろ!」
パーシーは顔を真っ赤にして怒っていて、ロンに一枚の写真を突きつけていた。顔を隠してるので誰が写っているのかは分からないが、 ソフィアは面倒ごとに関わるのはよしておこうと挨拶もせずに朝食を取りに下りることにした。
漏れ鍋には、ドウェインとクレアがいた。驚きで目を丸める ソフィアにウィンクをして近づいてくる。夏休みを一人にしてごめんねと謝りながらハグをするクレアに「ハリーがいたんだから最高の夏休みだったわ」と ソフィアは主張した。
「ママもパパもどうしてここに?」
「実はね、魔法省が君らをキングスクロスまで送り届けることになったんだ。僕らは今日その運転手だ」
この忙しい時期に闇祓い2人も運転手につけるなんてただ事ではない。 ソフィアは目を丸めた。だが、冷静に考えれば納得もいく。クレアが漏れ鍋がロンドンで1番護衛が厚いと言っていたではないか。その件も、今回の運転手の件も、おそらくはハリーのためなのだろう。
ハリーが狙われでもしているのだろうかと ソフィアは少し眉を下げたが、ドウェインが励ますように ソフィアの肩を叩いた。そして、頭を下げてこっそり耳打ちする。
「いいかい、 ソフィア。ホグワーツほど安全な場所は他にない。何も気にせず、いつも通り楽しんでおいで」
にっこりと笑うドウェインにつられて笑っていると、ハリーとロンが下りてきた。ロンが「あれ、何でおじさんもおばさんも此処にいるんだ?」と呟いているのが聞こえる。疑問に思ったハリーにロンが ソフィアの両親であると説明していた。
皆はこれから朝食をとるらしかったが、荷物を下ろすときに混雑していたら最悪だと思い荷物を早めに車に詰め込むことにした。ドウェインらも手伝ってくれたのでそう面倒なことでもない。一足先に旧型の深緑の車に荷物を詰め込めたのは家族特権かもしれない。
なんと、クレアがサンドイッチを作ってきてくれたというので ソフィアは喜んでその場で食べることにした。彼女はホグワーツに行く道中で食べれるようにと作ってくれたらしいが、残念ながら ソフィアは列車で食べるのは大鍋ケーキと5年前から決めている。
「こんにちは」
3人で漏れ鍋の外の車の前で談笑していると、どこか余所行きの笑顔を浮かべてフレッドが歩み寄ってくる。ドウェインが目を輝かせた。
「フレッド、 ソフィアが君からの手紙を待ちわびて毎日手紙が来てないのかって煩かったんだよ。ボーイフレンドなら娘をもっと構ってやってくれ」
「パパ!」
いたずらっぽく笑うドウェインに ソフィアは叫んだ。別に付き合い始めたなどわざわざ報告はしていなかった。フレッドが胡乱げな目を ソフィアに向けてきたので、慌てて首を振った。
「モリーが教えてくれたのよ」
くすくすと笑うクレアに、今度は ソフィアが胡乱げな目でフレッドを見る羽目になった。
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