▼ 再戦2
「ソフィア!」
ハーマイオニーが後ろから声をかけてきた。ソフィアが立ち止まって振り返る。ハーマイオニーは息を切らせて、「ちょうど良かった」と呟いて ソフィアに向き直った。
「今から図書館に行かなくちゃいけないんだけど、一緒に来てくれない?」ハーマイオニーが声を濁らせた。「私、マグル生まれだから」
「いいわよ」
ソフィアは納得したように頷いた。ハーマイオニーからすれば、ソフィアは純血の魔法使いなので、心強いのだろう。
事件の被害が止まったとはいえ、アーニーをはじめハッフルパフの生徒も何人かピリピリしていた。ハーマイオニーがまだ不安がることも納得できた。
「急いでよ」ソフィアは茶目っ気たっぷりに付け足した。
「それにしても、何で図書館に? クィディッチの試合直前じゃなくても良いでしょうに」
図書館に向かいながら、ソフィアが聞いた。
「まだ確証はないんだけど」ハーマイオニーは声を潜めて言った。「秘密の部屋の封印されたっていう恐怖が何か、分かった気がするの」
ソフィアは鼓動が早くなるのを感じた。ドクドクと血の流れが早くなる。ハーマイオニーも、秘密の部屋について調べていたのだろうか。
「ねえ、五十年前も部屋が開かれたことは知ってる?」ソフィアが恐る恐る聞いた。
「ソフィア、あなたも何か知ってるの?」
ハーマイオニーは驚いたように目を丸くして、ソフィアを見た。
「詳しくは知らないけど、多分――リドルって生徒が解決したこと」ソフィアが言った。
「どうして知ってるの?」ハーマイオニーはますます驚いたようだった。
「ママとパパが闇祓いで、ちょうど五十年前に事件が起きて、当時の生徒が解決したって教えてくれて……トロフィー室でリドルの名前を見つけたの」
「そうなのね。私たちも特別功労賞を見て、トム・リドルが解決したんじゃないかって思ったの」
「待って。トム・リドルって言った? 何で名前を知っているの?」
ソフィアは、聞き覚えのある名前に首を傾げた。トロフィーにも日記にも、「T・M・リドル」と書かれていたのになぜだろうか。ハーマイオニーがなぜトムという名前を知っているのか、ソフィアは不思議だった。
「ハリーがリドルの日記を拾ったの」
ハーマイオニーが言った。ジニーがまた日記を落としたのかとソフィアは呆れた。以前ソフィアも拾ったが、日記にトムという名前はどこにもなかった。見落とすような隅に名前が書いてあったのだろうか。ソフィアは黙ったまま頷いて続きを促した。
「日記には不思議な仕掛けがあって、書き込むと返事が現れるの。持ち主はトム・リドルという五十年前に事件を解決した生徒だと、日記が返事をくれて……」
ソフィアは驚きで目を見開いた。あの日記に、そんな仕掛けがあるなんて思いもしなかった。(ハリーが人の日記に勝手に書き込みをした事実にもソフィアは驚いた。)
以前拾った時はウィズリーおじさんのマグル製品コレクションの一つと思っていた。ソフィアは不安に駆られた。なぜジニーがトム・リドルの日記を持っているのだろうか。それも、意志を持っているような魔法グッズを! ソフィアは、いよいよジニーを問い詰めなくてはいけないと決意した。
「その日記は今どこにあるの? 私にも見られる?」ソフィアが聞いた。
「ハリーの寝室に泥棒が入って、盗まれたの」
ハーマイオニーの返事に、ソフィアは衝撃で目を見開いた。
「盗難届を出した方がいいってハリーに言ってるんだけど……」ハーマイオニーが悩ましげに言った。
「うーん」ソフィアは有耶無耶な返事をした。
間違いなくジニーが盗んだとソフィアは考えていた。(元々彼女が持っていたのだから、こっそり返してもらったと言ってもいいのかもしれない。)盗難届を出されたら、ジニーも気が気じゃないだろう。既に憔悴しているジニーが罰せられてもっと落ち込む姿を想像すると、ソフィアは何も言えなかった。
「ソフィア、犯人に心当たりあるの?」ハーマイオニーが聞いた。
「いいえ」ソフィアは咄嗟に否定した。
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