immature love | ナノ


▼ バレンタイン2

 ソフィアは磨いていた盾をまじまじと見つめた。「T・M・リドル」と書かれている。妙に見覚えがある名前だった。「一九四三年」と授与した年数が刻印されている。

「これ、誰か知ってる?」ソフィアは二人を振り返った。「見覚えがあるのよね」

 二人は首を振って、ソフィアの盾を覗き込んだ。

「『ホグワーツ特別功労賞』なんて、よっぽどだろ。何すれば貰えるんだろうな」

 ギリアンが不思議そうに首を傾げた。

「相当昔だから、もしかしたら今は偉い人なのかもよ。だから見覚えがあるとか?」マルタも銀磨きの手を止めた。「待って。一九四三年って、五十年前だよ!」

「五十年前?」

 ソフィアは、再び盾を見た。ピンときていないソフィアに、マルタはもどかしげに言った。

「五十年前に、秘密の部屋が開かれて、生徒が犯人を見つけたんでしょお!」

 ソフィアとギリアンは、あんぐりと口を開けた。

「じゃ、じゃあ、リドルはこの事件を解決して、賞を貰ったんだ!」

 ソフィアが興奮したように言った。

「でも、こいつがどうやって解決したのか纏めた本でもないと今は役に立たないよな」ギリアンががっかりしたように言った。「"盾"だけじゃあ役に"立て"ねえよ」

 T・M・リドル

 ソフィアはもう一度名前を見た。どうして、リドルという名前に覚えがあるのか、ソフィアは不思議だった。マルタが言った通り、今は有名人だったりするのだろうか。

 数週間も経って、淡い陽光がホグワーツを照らす季節が巡ってきた時、何事もなかったようにハーマイオニーが退院した。マンドレイクはまだ薬になる段階まで成長していない。ハーマイオニーが石になっていなかったことは、火を見るより明らかだった。心配したのにと憤慨するソフィアを宥めるのに、ハーマイオニーだけではなくハリーやロンも苦労した。

 良い事は連続して続くものらしい。ジャスティンが襲われた事件以来誰も襲われていなかった。それに加え、マンドレイクがもうすぐ刈り取りの段階まで来ているらしいではないか。 事件はいよいよ幕を閉じるのだろうか。ソフィアは嬉しいニュースの連続に、ハリーたちを許すことにした。

「一週間も無視するなんて、 ソフィアってば、ねちっこいや」

「シッ! 心配させちゃったんだから、しょうがないじゃない」

 ロンが不満げに口を尖らすので、ハーマイオニーが咎めるような声をあげた。ソフィアはロンへ鬱憤をぶつけるようにロンの鼻をつまんでやる。やめてよ ソフィアと赤くなった鼻をさすりながらロンが非難の声をあげた。

「それにしても、犯人は秘密の部屋を閉じたのかしら?」 ソフィアが不思議そうに口を開いた。

「きっと学校中が警戒してるから、腰抜かしたんだよ。ロックハートは自分がやめさせたって信じてるみたいだけど……」

 ハリーが嫌そうに顔を歪め答えたので、 ソフィアも同じく口を開けて固まった。

「嘘でしょう? そこまで自惚れ屋なの?」ソフィアが非難がましい声で言った。

「あそこまでアホだと幸せだろうね」ロンが肩をすくめた。「あいつなら悪口言われたって、照れ隠しか嫉妬って思うぜ」

「あり得る話ね」ソフィアはしみじみ頷いた。

「あのアホ、今に何かやらかすぞ」ロンが鼻を鳴らした。

「そんな……先生をアホ呼ばわりすべきじゃないわ」

 ハーマイオニーが若干傷ついたような声で、控えめに抗議した。ハーマイオニーも熱心なロックハートファンだったことをソフィアは思い出した。

 以前、廊下で会った時もハーマイオニーはロックハートの著書に出てくる薬の理解を深めるためと言って、禁書棚の本を借りていた。あの時、ハーマイオニーに会う前にジニーにも会っていて……

「あーっ!」

 ソフィアが突然叫び声を上げたので、ハリー、ロン、ハーマイオニーは驚いたようにソフィアを見た。ソフィアは、あの時、ジニーの持っていたマグルの日記を拾ったことを思い出した。あの日記にも、「T・M・リドル」と書かれ、さらには盾と同じくらい昔の代物だった。

「用事を思い出しちゃった。またね!」

 ソフィアは急いで、ジニーのところへ行った。ジニーは、随分と血色が良くなっていた。襲撃事件が止まったことで、心労がだいぶ軽くなったのかもしれない。

「ねえ、ジニー」ソフィアは声をかけた。

「あっ、ソフィア!」ジニーはソフィアを見て嬉しそうにした。「ギリアンは元気?」

「元気すぎるくらいよ」

 ソフィアは目をぐるりと回した。ジニーはクィディッチ観戦以来、ギリアンに懐いているようだった。ソフィアの返事に、嬉しそうに笑っている。

「前に、あなたの落とし物を届けた時のことを覚えている? 古い日記帳」

 ソフィアが聞くと、ジニーはみるみるうちに顔を青くした。

「私、覚えてないわ。日記なんて持ってないし」

 明らかに嘘だった。完全に否定されてしまっては、ソフィアも聞きようがない。諦めたように、ソフィアは頷いた。

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