碓氷真澄
12/03 Sun
--- 俺の話 立花鳴未はなんでもできる いやなんでもは語弊がある 勉強も芸術も音楽もできる顔も性格もいい 料理と運動、特に球技ができない。 でもできないことよりできることのほうが多いからOK 優しくてかっこよくて頼り甲斐があって誰からも好かれてる。
誰からも好かれてるけど、俺は誰も好きじゃない 隣の席の女子も 前の席の男子も 担任も部活の顧問も俺の周りにいる全ての人間のことを1ミリも「好き」だなんて思ったことない。 女の子は、俺の外面に惹かれて告白をしてきて、俺の他人への興味に無さに気づいて離れていく。中学3年間はそんなんを永遠と繰り返してた。 だからもう煩わしいから誰ともそういう関係にはならないで一生終えることにした。この先、ずっと。
高校生になって身長がシンプルに伸びてまたクソ爆モテした。くそめんどくさい。 人間関係はなあなあで勉強と趣味にだけ時間を使う1年を過ごした。まあそこそこ面白い友達もできたし、俺としては満足な高校1年生だった。
次の春が来て俺は高校2年生になった。 新学期、そうあれは5月のこと 授業が終わり、さて帰ろうかと荷物をまとめて席を立つ。クラスメイト数人に別れの挨拶をし教室でたところでほぼ唯一の友人と思っている佐久間咲也が図書室に新しい本が入ったから行かないか?と声をかけてきた。 「暇だしいいよ」 今思えばいいわけない。 図書室は1階の奥まったとこにある。 1年生のフロアを端から端まで教室の前を通り、1階に降り右に曲がる、咲也と他愛もない会話をしていたらあっという間に到着する。 咲也の図書室に入る背中を追うことなく、俺はものすっっっっごい馬鹿力で腕を引かれ図書室横の男子トイレに引きずられた。まじかよ俺そこそこでかいよ?
「アンタ、2年?」 「は?」 俺を引きずったのは無表情で無愛想で俺よりちょっと身長が低い男子 頬が赤くて、綺麗な紫の目が潤んでいる。すげぇ顔の整った子。なんで髪の毛2色なんだ? 「俺、碓氷真澄。1年」 「あぁ...立花、鳴未、2年だけど...あのさ、腕痛い」 なるみ...へえ... 何を納得したのか、その碓氷くんは(こころなしか)ニヨニヨと口元を緩めじっと俺を見てくる。ックこいつ口元にホクロあるじゃん…だからなんだって話。 なお腕離してくれないもよう、結構強い。 「鳴未くん!?...だ、どぅ、で、どうしたの?!」 碓氷くんと意味もなくジリジリしていたらやっと咲也が助けに来た。 ッチ、って先輩に盛大に舌打ちする碓氷くん やっと手を離してくれる思ったらグイと腕を引っ張られ、頬にキスされた。いや正確には俺が顔を背けて頬になった。こいつめちゃくちゃ的確に口狙ってた。 「ねえ俺の事好きになって」最後に言われた。
意味がわかんなすぎてその日の夕飯のカレーの味もわかんなかったし、風呂の湯も冷たかったし足先もめちゃ冷えて全然寝れなかったわ。 次の日昇降口に碓氷くんがいて普通に挨拶してきたから「お前俺の事好きなの?」って聞いたら「そうだけど、結婚式いつにする?」とか会話進めてきて普通に逃げた。滅茶苦茶怖い。俺の高校生活終わった。
まあ終わったのは高校生活だけではなくて この先の俺の人生だったって話なんだけどさ
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