4/28 我妻善逸
「……我妻くん」
「どうかしたの、渋川さん?」
新年度初の委員会会議が始まる。そわそわしている隣の渋川さんに声をかけられて、返事する声が高くなってないかちょっと不安だ。だって渋川さんめっちゃいい匂いするんだもん!! この学校長いこといるけど女子と隣に座る機会とか今までなかったし!!
「我妻くんって確か部活とかやってなかったよね?」
「さっさと帰りたいなら委員長やってーとかならさすがに断るからね!?」
「おいそこ、うるさいぞ」
ほら見つかったじゃない! と叫びかけたのをすんでて飲み込む。冨岡先生の目は鋭くて、飲み込みきれなかった情けない声が口の端から漏れた。
「……や、えっとね、確か委員長って卒業式で図書カード貰えるよね? せっかくだしやろうかなーって」
「図書カード目当てで委員長やるとか割に合わないでしょ……」
「ついでに推薦も狙えるかと」
「……ねえ渋川さん、確かこの前風紀委員めちゃくちゃ嫌がってなかった?」
「いやー、なっちゃったからにはやるしかないかなーって」
「いや切り替え早すぎるでしょ」
こそこそと小さい声でやりとりをしていると、なんだかそういう関係になったみたいだ――と心の中で思いながら、会議の進行を見守る。委員長に立候補する人いるかーと冨岡先生の声が響くと間をおかず渋川さんが手を挙げた。
「渋川、副委員長は誰がいい?」
「えーっと……我妻くんで!」
「いやおかしいでしょ何その流れ!?」
――図られた! と思ったときにはもう遅かったらしい。黒板に刻まれた彼女と俺の名前を見つめて、溜め息を吐いた。
……これからの1年、無事でいられるんだろうか。